オールドティッコ

オールドティッコ：時を超える生命の神秘

スウェーデンのダーラナ地方、フルフジェーレット国立公園にそびえ立つオールドティッコは、推定樹齢9,566年という驚異的なオウシュウトウヒです。かつては「世界最古の木」として名を馳せましたが、その実態は、幹や枝、根を数千年に渡り再生し続けるクローン樹であることが明らかになりました。現在では、現存する世界最古のオウシュウトウヒ、そして世界で4番目に古いクローン樹として知られています。

年輪年代学が通用しないクローン樹

通常の樹木であれば、年輪を調べることで樹齢を特定できますが、クローン樹にはその手法が適用できません。そこで、オールドティッコの樹齢は、木の根元から採取された植物片の放射性炭素年代測定によって決定されました。その結果、根系は9,566年前から存在していることが判明したのです。

地上に見える幹は、わずか数百年前に形成されたものと推定されています。しかし、オールドティッコは、「取り木」や「栄養繁殖」といった特殊な方法で、気の遠くなるような長い年月を生き抜いてきました。

取り木: 枝が地面に接触すると、そこから新しい根が生える現象
栄養繁殖: 幹が枯れても、根系が生きていれば新しい幹を再生する現象

これらの現象によって、オールドティッコは、幹を何度も再生させながら、根系を維持し続けてきたのです。

発見の経緯と詳細

オールドティッコは、ウメオ大学の自然地理学教授レイフ・クルマンとその妻であるリサ・エーベリによって発見されました。彼らは、この木の急成長が地球温暖化の影響であると考え、亡くなった愛犬にちなんで「オールドティッコ」と名付けました。

オールドティッコが位置するフルフジェーレット山脈は、長年クルムホルツと呼ばれる厳しい環境下にありました。そのため、オールドティッコは低木として細々と生きてきましたが、20世紀以降の温暖化によって、通常の木の大きさにまで成長しました。高さは現在5mほどです。

脅威と保護

オールドティッコの推定樹齢は、約1万年前に最終氷期が終わった時期とほぼ一致します。これは、フェノスカンジア氷床が後退してフルフジェーレット山脈が形成された時期でもあります。

自然保護当局は、この貴重な樹木を保護するため、フェンスの設置を検討しました。潜在的な破壊者や、トロフィー目的のハンターから守るためです。

クローンとして生き続ける

2024年7月には、ストックホルムのアートスタジオ、Goldin+Sennebyによって、オールドティッコのクローンが制作されました。オールドティッコの頂部から切り取った小枝を、別のトウヒの幹に接ぎ木したもので、マルメの新しい病院内に設置された気候管理されたインスタレーションに収蔵されています。オールドティッコのDNAを受け継ぐクローンは、これからも生き続けていくことでしょう。

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外部リンク

* ウィキメディア・コモンズ：オールドティッコに関するカテゴリ

オールドティッコは、単なる古い木ではありません。厳しい環境を生き抜き、地球温暖化の影響を受けながら、クローンとして生き続けるその姿は、私たちに生命の神秘と地球環境の変化について深く考えさせてくれます。

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