オールド・グレート・ノース・ロード

オールド・グレート・ノース・ロード（Old Great North Road）は、オーストラリア、ニューサウスウェールズ州に位置する歴史的な道路であり、1826年から1836年にかけて建設が行われました。全長は260キロメートルで、シドニーとハンター地域を結ぶ重要な交通路です。この道路の建設には、囚人労働力が広く使用されており、歴史的な意義が高いため、2010年にはユネスコの世界遺産に「オーストラリアの囚人遺跡群」の一部として登録されました。

道路のルート

オールド・グレート・ノース・ロードは、現在ファイブ・ドックと呼ばれるシドニーの郊外を起点とし、ライドやドゥラルを経由してホークスベリー川沿いのワイズマンズ・フェリーに至ります。ワイズマンズ・フェリーを過ぎると、ダラグ国立公園の辺りを通り、バケッティーまでの区間ではブッシュに覆われた道を進みます。バケッティーからは山道を進み、最終的にウォロンビーに到達します。ウォロンビーでは二つのルートに分岐し、北東はセスノックやマイトランドを経てニューカッスルへ、北西はブロークを経由してシングルトンを目指します。

経済的背景

1788年にシドニーの建設が始まると、初の20年間はオーストラリアの内陸部への開拓がほとんど進まなかった。その理由の一つには、植民地政府が内陸開発よりもシドニーの整備に力を入れていた事が挙げられます。さらにはナポレオン戦争の影響で本国からの囚人の数が減少し、労働力不足となっていたことも要因です。しかし、シドニーの流刑植民地としての成長とともに、現地での生産活動が求められるようになり、当初の目的はニューサウスウェールズ植民地内での農地調査と開発に向けられることになります。

1804年にはニューカッスルが発見され、開拓が始まりますが、当初は海からの進入のみに限られており、交通の便が悪い状態でした。1810年に発足したラックラン・マッコーリー総督によって、シドニーとパラマッタを結ぶ道路が建設され、ホークスベリーまで拡張されることで、新たな交通路が確保されます。1815年のナポレオン戦争終結後は、移民が増加し、ニューサウスウェールズの人口が急増しました。ここで総督ラルフ・ダーリングは、経済発展のために新たなインフラが必要だと考え、オールド・グレート・ノース・ロードの建設に取り組むことになります。

社会的背景

オールド・グレート・ノース・ロードの建設は、経済的な背景だけでなく、社会的な背景にも影響を受けています。人口の急増によってシドニー市内での治安が不安視され、囚人の労働力を利用することで安価な施工が可能となったのです。囚人たちは足に鎖をつけられ、過酷な環境での作業を強いられました。休息場所も劣悪で、季節を問わず作業が続けられたため、非常に過酷な条件下での建設が行われていました。

現在の状況

現在、オールド・グレート・ノース・ロードの一部には、開拓が進んだハンター地域により放棄された区間もあります。また、1970年代には多くの観光客が訪問したことから、舗装の状態が悪化しました。道路は自動車やバイク通行を前提としていなかったため、1978年以降、ニューサウスウェールズ州の公園管理局は、この道路を閉鎖して補修工事を行っています。さらに、1990年には地元の自治体が「囚人探査プロジェクト」を立ち上げ、建設した道路の修復や保存が進められています。特に初期に建設された部分は重要な歴史的遺産であり、当時のイギリスの建築技術を証明するものとなっています。

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