ラックラン・マッコーリー

ラックラン・マッコーリー（1762年1月31日 - 1824年7月1日）は、スコットランドのヘブリディーズ諸島マル島出身のイギリス軍将校であり、1810年から1821年までニューサウスウェールズ植民地の総督を務めました。彼は流刑植民地から自由植民地への移行期において、社会、経済、建築など多岐にわたる分野で重要な役割を果たしました。

マッコーリーが総督に就任した当時のニューサウスウェールズ植民地は、流刑囚を中心とした社会であり、経済やインフラも未発達でした。彼は、自由移民の奨励、公共施設の建設、教育機関の設立などを通じて、植民地の発展に尽力しました。特に、シドニーの都市計画においては、彼のリーダーシップの下で多くの公共建築物が建設され、今日のシドニーの都市景観の基礎が築かれました。

マッコーリーの功績として特筆されるのは、有罪判決を受けた人々への寛容な姿勢です。彼は、刑期を終えた囚人たちに市民権を回復させ、社会復帰の機会を与えました。この政策は、当時のイギリス本国からは批判されることもありましたが、植民地社会の安定と発展に大きく貢献しました。

一方で、マッコーリーはアボリジニに対して厳しい姿勢で臨んだことでも知られています。彼は、アボリジニの土地を奪い、彼らを強制的に移住させる政策を推進しました。また、アピンの虐殺と呼ばれる事件では、アボリジニの住民が多数殺害されるという悲劇も起きました。この事件は、マッコーリーの評価を大きく左右する要因の一つとなっています。

マッコーリーの政策は、ニューサウスウェールズ植民地の社会に大きな影響を与え、その後のオーストラリアの発展の礎となりました。しかし、アボリジニに対する彼の政策は、現代においても批判の対象となっています。

マッコーリーの死後、彼の名前は多くの場所や事物に冠されています。ニューサウスウェールズ州のポートマッコリーという町、タスマニア島と南極の間にあるマッコーリー島、シドニーにあるマッコーリー大学、投資銀行のマッコーリー銀行、そしてマッコーリー病院などがその例です。これらの名称は、彼の功績を記念し、後世に伝えるために付けられました。

ラックラン・マッコーリーは、ニューサウスウェールズ植民地の歴史において、重要な人物の一人です。彼の功績と過ちは、今日のオーストラリア社会においても議論の対象となっており、彼の遺産は複雑な様相を呈しています。

参考文献：
Dictionary of Australian Biography
N. D. McLachlan, 'Macquarie, Lachlan (1762 - 1824)', Australian Dictionary of Biography, Volume 2, Melbourne University Press, 1967, pp 187-195.
* The Macquarie Era - State Library of NSW

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