オール・アラウンド・ザ・ワールド (リトル・ウィリー・ジョンの曲)

オール・アラウンド・ザ・ワールド

「オール・アラウンド・ザ・ワールド」（All Around the World）は、R&Bシンガー、リトル・ウィリー・ジョンが1955年に発表した、彼のキャリア初期における重要な楽曲です。ソウルフルでアップテンポなシャッフル・リズムが特徴的なこの曲は、シンガーソングライターのタイタス・ターナーによって書かれました。このシングルは、リトル・ウィリー・ジョンが後に数多くのヒットを生み出すことになるキング・レコードからの第一弾リリースであり、その後の成功の礎を築いた一曲となりました。

楽曲のルーツ

この楽曲の authorship はタイタス・ターナーにあります。ターナーはアトランタを拠点に活動したR&Bアーティストであり、リトル・ウィリー・ジョンの1959年のヒット曲「リーヴ・マイ・キトゥン・アローン」も彼の手によるものです。「オール・アラウンド・ザ・ワールド」に関しては、ターナー自身が1955年6月にマーキュリー・レコード傘下のウィング・レーベルからシングルとしてリリースしたバージョンがオリジナルとされています。リトル・ウィリー・ジョンのバージョンは、そのオリジナルから約1ヶ月後にキング・レコードから発表されたものです。したがって、ジョンのバージョンは厳密にはカバーにあたります。

成功への道

タイタス・ターナー自身の歌唱によるオリジナル版は、商業的には大きな反響を呼びませんでした。しかし、リトル・ウィリー・ジョンがこの楽曲を取り上げると状況は一変します。ジョンの歌う「オール・アラウンド・ザ・ワールド」は、リリースされるやいなや当時のR&Bチャートで最高5位を記録する大ヒットとなりました。この成功は、ソングライターとしてのタイタス・ターナーに大きな光を当てることとなり、「オール・アラウンド・ザ・ワールド」は彼にとってソングライターとしての最初の重要な成功体験となったのです。

歌詞の世界観と音楽スタイル

この楽曲は、愛する人への揺るぎない愛情を力強く歌い上げたラヴ・ソングです。「お前を愛していないなんてあり得ない」というストレートなメッセージが中心テーマとなっています。特に印象深いのは、そのあり得なさを強調するために用いられるユニークな比喩表現です。各ヴァースは「ベイビー、お前を愛しているんだ。知っているだろう」という愛の告白で始まり、その後に続くフレーズで締めくくられます。その内容は、「もし俺がお前を愛していないというのなら、それはまるでグリッツ（南部料理でよく食べられる粥状の食品）が食べ物でなくなったり、卵が鳥類のものでなくなったりするのと同じくらい不可能なことだ。あるいは、あの有名なレオナルド・ダ・ヴィンチの傑作、モナ・リザが実は男性だったと言うのと同じくらい、信じがたい話だ」というものです。この独創的な歌詞が、楽曲の情熱的な感情を聴き手に強く印象付けます。音楽的には、前述の通りソウルフルでアップテンポなシャッフル・スタイルが採用されており、軽快ながらも力強いグルーヴが特徴です。

参加ミュージシャン

リトル・ウィリー・ジョンの「オール・アラウンド・ザ・ワールド」のレコーディングには、当時の優れたミュージシャンたちが参加しています。ボーカルはリトル・ウィリー・ジョン自身。サックスはウィリス・ジャクソン、ピアノはブルース界のレジェンドであるチャンピオン・ジャック・デュプリー、ギターはセッション・ミュージシャンとして数々の名演を残したミッキー・ベイカー、ベースはアイヴァン・ローリー（またはアイヴァン・ローレ）、そしてドラムスはカルヴィン・シールズが担当しています。彼らの確かな演奏技術が、楽曲の魅力を最大限に引き出しています。

リトル・ミルトンによる再解釈

リトル・ウィリー・ジョンのヒットから13年後の1968年、「オール・アラウンド・ザ・ワールド」はブルース・ギタリスト兼シンガーのリトル・ミルトンによって新たな生命を吹き込まれます。ミルトンはチェス・レコード傘下のチェッカー・レーベルからこの曲をシングルとしてリリースするにあたり、タイトルを楽曲の印象的な歌詞フレーズから取って「グリッツ・エイント・グローサリーズ (Grits Ain’t Groceries)」へと変更しました。リトル・ウィリー・ジョンのバージョンが比較的ミドルテンポのシャッフルだったのに対し、リトル・ミルトン版はよりテンポを速め、ファンキーな要素を強調したアレンジが施されています。この大胆な再構築は成功を収め、ミルトン版はR&Bチャートで13位、さらにポップ・チャートでも73位にランクインするヒットとなりました。この成功により、「グリッツ・エイント・グローサリーズ」はリトル・ミルトンの代表的なレパートリーの一つとして広く知られることになります。

その他のバージョン

この楽曲は、リトル・ウィリー・ジョン版やリトル・ミルトン版以外にも、多くのアーティストによってカバーされています。これまでに、著名なシンガーであるルー・ロウルズをはじめ、サヴォイ・ブラウン、ウェット・ウィリー、ジョン・ブッテらが自身のスタイルでこの曲を録音しています。これらの多様なカバーバージョンが存在することは、「オール・アラウンド・ザ・ワールド」という楽曲が持つ普遍的なメロディと歌詞の力が、時代やジャンルを超えてアーティストたちにインスピレーションを与え続けている証と言えるでしょう。

タイタス・ターナーが生み出し、リトル・ウィリー・ジョンがR&Bチャートで成功させ、そしてリトル・ミルトンが新たなアレンジでヒットさせた「オール・アラウンド・ザ・ワールド」は、複数のアーティストの手に渡りながらもその輝きを失わず、今日まで多くの音楽ファンに愛され続けている名曲です。

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