オール与党

オール与党とは

オール与党とは、国会や地方自治体において、大半の政党が与党となり、与党と野党の区別が小さくなる現象を指します。これは、政治の安定をもたらす一方で、多様な意見の反映を阻害する可能性も孕んでいます。本記事では、オール与党の発生から拡大、そして後退までの流れを解説します。

オール与党の発生

1960年代後半から1970年代前半にかけて、地方自治体では社会党などの革新勢力が推す首長が誕生しました。彼らは環境問題や福祉政策を重視しましたが、オイルショックによる財政難や中道政党の保守化により、政策の実現が困難になりました。そのため、革新系の首長の中には、保守系議員を取り込み、議会運営を円滑にする動きが見られました。

保守系議員も、地域のために政策面で妥協し、オール与党体制が各地で誕生しました。この体制を維持するため、政党色の薄い公務員が首長の跡継ぎとして擁立され、国政与党と野党が共通の候補を支援する「相乗り」が行われることもありました。

オール与党の拡大

1980年代には、保守系の候補者に革新・中道系の政党が同調する相乗り選挙が広がり、保守優位の自治体でもオール与党体制が拡大しました。背景には、社会党が都市部での支持を失い、地方重視の自民党と協力する余地が生まれたことがあります。また、地方の各勢力が共同で中央に陳情することで、予算獲得が容易になるというメリットもありました。

オール与党体制が擁立する首長は、中央とのパイプを持つ元官僚が多く、首長自身も選挙での無投票や再選の確実性というメリットを享受していました。

オール与党の後退

しかし、安易な公務員の擁立は政党の候補者リクルート能力を低下させ、選挙戦の回避は政党の求心力を低下させました。財政難により中央からの補助金獲得が困難になると、各政党は予算を奪い合うようになり、オール与党体制は崩壊していきました。

1990年代末以降、宮城県の浅野史郎氏や横浜市の中田宏氏など、現職の相乗り候補を選挙戦で破る例が続出しました。また、長野県では新幹線の開通による地域間格差や談合への嫌悪感から、田中康夫氏が当選するなど、有権者の意識の変化がオール与党体制に影響を与えました。

平成の大合併もオール与党体制の破壊に一役買いました。合併の是非や合併後の主導権争いが、地域をまとめることを困難にしたからです。

2006年には民主党が首長選挙での相乗り禁止の方針を打ち出し、2007年の統一地方選挙では与野党相乗り候補者が激減しました。しかし、2011年の統一地方選挙では、東日本大震災の影響もあり、民主党が自民党と相乗りするケースも見られました。

国会におけるオール与党

国会では1980年代以降、共産党を排除した国会対策委員長会談が行われ、法案採決や日程について調整が図られました。1999年の自自公連立発足後は共産党も参加するようになりましたが、2007年には自民党と民主党の間で大連立構想が検討されるなど、国会でのオール与党実現が模索されました。

2009年の政権交代後、民主党が保守寄りの政策を打ち出す姿勢を見せたことで、自民党との対立軸が曖昧になり、オール与党体制となりつつありました。しかし、その後自民党が政権に復帰し、再び対決路線をとるようになっています。

「相乗り」と「共闘」の違い

「相乗り」と「共闘」は、選挙における協力に使われる言葉ですが、ニュアンスが異なります。「相乗り」は保守政党が中心になるケースが多く、選挙のみの協力を指すのに対し、「共闘」は革新政党が中心になり、選挙以外での協力を含むことが多いです。

まとめ

オール与党体制は、地方自治や国会において、政治の安定をもたらす一方で、多様な意見の反映を阻害する可能性も孕んでいます。有権者の意識の変化や政党の戦略によって、その形態は変化しており、今後の政治情勢にも影響を与えると考えられます。

もう一度検索