オーロフ・レング

オーロフ・レング

オーロフ・レング（1884年12月24日 - 1946年4月26日）は、デンマークの作曲家であり、学校教師としても教育に情熱を注いだ人物です。彼は生涯を通じて数多くの優れた歌曲を作曲し、その親しみやすく心に響くメロディーは、当時のデンマーク国民に広く受け入れられ、現在も歌い継がれています。

生い立ちと初期の人生

1884年、ユトランド半島中部の町イェリングに生まれました。父親はイェリングの学校で国語と歴史を教えていました。レングが育った家庭は、音楽が日常に溶け込んだ環境で、学校唱歌集（højskolesangbogen）は常に身近にある存在でした。父親がヴァイオリンを弾き、母親が子どもたちに歌を奨励するという家庭環境の中で、レングは幼い頃から音楽に親しみました。自らのヴァイオリンを手にした彼は、早くから音楽家になることを夢見るようになります。

イェリングの学校で教職課程を修了したレングでしたが、そのユーモアと多才さから、ヴァイオリニスト、作曲家、さらには漫画家といった多様な道も視野に入れていました。最終的にコペンハーゲンの学校組織に教師として採用され、首都での生活を始めます。ここで彼は後に生涯の友となるトーヴァル・オーゴーと出会いました。教師としての職務を遂行する傍ら、オルガニストやチェリストとしての高度な音楽教育も継続し、これらの音楽活動は彼の人生においてますます重要な位置を占めるようになります。

音楽家としての活動

1907年にはドイツの音楽家たちとノルウェーのベルゲンやスウェーデンのヨーテボリを巡る音楽旅行に参加しました。この楽団解散後も、コペンハーゲンの様々な場所で演奏活動を続けました。1910年にはチェロの師の姉妹、マリーイ・イーネヴォルスンと結婚。翌年、リーベの音楽教師の職を得たことで、生活の安定を得ることができました。

リーベでの教職期間中も、ヴィルヘルム・ハンスンの音楽出版社と協力して作曲活動を行い、いくつかの楽曲を発表しました。レングは特に、言葉（歌詞）と旋律を結びつける才能に恵まれており、人々の心に訴えかけるような歌を作り出すことができました。彼の楽曲は、詩に込められた大切な思いを、親しみやすいメロディーに乗せて聴く人に届ける力を持っていました。西ユトランド地方で音楽活動が盛んになると、彼はアマチュア管弦楽団「Jyske Spillemænd」と連携し、数々のコンサートを開催しました。特に、オペラ『Svinedrengen』の上演は成功を収めました。

音楽観の深化と「転職」

ライプツィヒでの短期留学を経て、1923年には長期間の海外留学という長年の夢を叶えました。パリに滞在したレングは、現地のデンマーク宗派教会でオルガニストを務めながら、パリとその周辺の音楽シーンに深く触れました。様々な音楽を聴き、また自らも作曲を行いました。帰国途中、ドイツのいくつかの都市に立ち寄りますが、ボイロンでの滞在中に聴いた教会音楽に強い感銘を受け、それまで計画していた大規模なオペラ作曲の構想を断念します。この経験が彼の音楽観を大きく変え、自らの進むべき道を見出すきっかけとなりました。それは、壮大な「大規模音楽」ではなく、キリスト教の精神、デンマークの民俗的な要素、そして民衆のための歌、すなわち民謡を作曲することでした。彼は、旋律の最も重要な役割は、言葉の意味や感情を正確に、そして豊かに伝えることにあると考えたのです。

キャリアの頂点と遺産

1930年、スコーロプの国立学校に音楽教師として任命された時期は、彼の音楽人生における絶頂期でした。ここには民謡を重視する土壌があり、彼の音楽性は最大限に発揮されました。彼の民謡に関する深い知識は広く認められ、デンマーク放送協会から月例放送の指揮を依頼されるようになります。これが母体となり、「オーロフ・レング合唱団」が結成され、ドイツ占領下で放送が中止されるまで、人気番組『一緒に歌おう』（Syng med os）として多くの人々に親しまれました。この番組は、占領期という困難な時代において、国民が歌を通じて連帯感を育む上で重要な役割を果たしました。

教育者としては、学生に対して献身的で機知に富んだ授業を行い、多大な影響を与えました。また、親友であるトーヴァル・オーゴーと共に、音楽初心者向けの教育的な小冊子を多数執筆し、音楽教育の普及にも貢献しました。レングがデンマークの歌のために残した多くの作品は、後にデンマーク国教会の讃美歌集にも収録されています。彼の代表的な歌曲の多くは、彼が愛したフュン島の豊かな自然の中を、常にメモ帳を挟んだ用箋挟を手に歩きながら、インスピレーションを得て生まれたと言われています。

長年にわたる献身的な活動は彼の健康を蝕み、過労のため教職を退かざるを得なくなりました。晩年は白血病に苦しみ、病気療養を余儀なくされます。1946年4月26日、スヴェンボーでその波乱に富んだ生涯を終えました。

レングの功績は現代にも受け継がれています。ヴァイストロプの教会墓地やスコーロプには彼の記念碑が建てられており、彼の業績を称えています。彼は生涯に235曲の歌曲と44曲の子ども向けの歌を含む、計279曲もの作品を遺しました。彼の代表的な楽曲の一部は、今日でも学校の唱歌集に掲載され、デンマークの子どもたちによって歌い継がれています。特に、国民に寄り添う歌、言葉の力を信じた歌作りは、その後のデンマークの音楽文化に多大な影響を与えました。

主要作品

子どものためのヴァイオリン教本 (1923)
子どものためのピアノ教本 (1928)
オルガン教本 (フィン・ヴィーザウーと共著, 1933)
歌え、デンマーク (1936)
仕事歌集 (1936)
歌曲 (代表的なもの)
Se, nu stiger solen af havets skød (ヤコプ・クヌスン詞, 1915)
Kær est du fødeland (St. St. ブリガ詞, 1922)
Sig nærmer tiden (St. St. ブリガ詞, 1922)
Danmark, nu blunder den lyse nat (トゥーヤ ラースン詞, 1922)
Hvor smiler fager den danske kyst (Johs. V. イェンスン詞, 1935)
Sangen har lysning (ビョルンソン詞, 1937)
* Kærlighed til fædrelandet (グルントヴィ詞, 1938)

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