イェリング

イェリングは、ユトランド半島ヴァイレ基礎自治体に位置する、かつてヴァイキングの王座が置かれた場所です。現在は小さな町ですが、その歴史的価値は非常に高く評価されています。

イェリングには、900年代後期に築かれた2基の巨大な墳墓があります。北側の墳墓は、ゴーム老王の墓であると考えられています。墳墓からは木棺が見つかりましたが、銀杯などのわずかな副葬品しか発見されませんでした。一方、南側の墳墓からは棺すら発見されていません。この遺跡は多くの謎に包まれていますが、ハーラル1世（ハーラル青歯王）が教会と巨大なルーン石碑を建立した地であり、ゴーム王とチューラ王妃に関係のある場所として知られています。

教会の中心部にあたる場所の床下からは、男性が埋葬された痕跡が見つかっています。これは、ゴーム王が改葬されたものだと考えられています。しかし、チューラ王妃の墓はまだ発見されていません。

ハーラル王は、巨大な一枚岩であるイェリングの石碑に、ルーン文字で次のような碑文を刻ませました。

`ハーラル王は父のゴーム王と母チューラを記念しこの記念碑を作らせた。ハーラルはデンマーク、ノルウェーを勝ち取り、デーン人をキリスト教に改宗させた。`

この碑文は「デンマークのキリスト教化」の宣言として知られており、イェリングの石碑はデンマークで最も有名なルーン碑文の一つです。石碑には、キリストの磔刑像も描かれており、これは北欧におけるキリスト教美術の初期の例として貴重です。

イェリングは、ヴァイキング時代のデンマーク王国の隆盛と、キリスト教への移行を示す重要な史跡であり、その文化的・歴史的価値から、イェリング墳墓群としてユネスコの世界遺産に登録されています。現在では、王立イェリング博物館が設立され、出土品や歴史に関する展示が行われています。

関連情報

イェリング墳墓群
王立イェリング博物館公式サイト
ヴァイレ基礎自治体公式サイト (デンマーク語)
イェリングの歴史 (デンマーク語)

参考文献

* G・キャンベル編『図説　世界文化地理第百科 ヴァイキングの世界』熊野聰監修、朝倉書店、1999年。

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