カイエンヌ・フェリックス・エブエ国際空港

概要

カイエンヌ・フェリックス・エブエ空港（フランス語: Aéroport de Cayenne – Félix Eboué）は、南米大陸北東部に位置するフランス領ギアナの主要な国際空港です。この空港は、首都カイエンヌの中心部から南西におよそ13キロメートル離れたマトゥリー（Matoury）という地域に位置しています。フランス領ギアナにおける商取引や観光の拠点として、地域の経済活動を支える重要な役割を担っています。また、フランス領ギアナの国内線サービスを提供するエール・ギュイヤンヌ・エクスプレス（Air Guyane Express）は、当空港を主要な運航拠点とし、本社オフィスもここに構えています。空港の現在の名称は、フランス領ギアナ出身の著名な政治家であるフェリックス・エブエ氏を記念して名付けられました。歴史的には、カイエンヌ・ロシャンボー空港として知られていました。

歴史

当空港の建設は、第二次世界大戦中の1943年に始まりました。アメリカ陸軍が約10ヶ月を費やして完成させたこの飛行場は、当初、北アフリカ方面への爆撃機が燃料補給や待機を行うための中継地点として計画されました。興味深いことに、この空港のすぐ近くには、同じ1943年に一時的に建設されながらも、新しい飛行場ができたことで間もなく放棄された「ガリオン（Gallion）」飛行場の痕跡が現在でも確認できます。建設から数十年が経過した現在も、カイエンヌ・フェリックス・エブエ空港は民間航空のハブであると同時に、軍事的な機能も有しています。フランス領ギアナに駐屯するフランス軍のヘリコプター部隊が常駐しており、物資や人員の輸送を担う輸送機も頻繁に飛来しています。

名称の由来と改名経緯

当空港の旧称であった「ロシャンボー空港」は、アメリカ独立戦争においてフランス騎兵隊を指揮したロシャンボー伯爵に由来するものでした。しかし、この名称は長年にわたり論争の対象となりました。その理由は、ロシャンボー伯爵の息子であるドナティエン＝マリー＝ジョセフ・ド・ヴィムール、通称ロシャンボー子爵が、ハイチ革命時にフランス植民地軍の指揮官として反乱軍を極めて厳しく弾圧した人物として知られており、父子の名前が混同されることへの懸念があったためです。この歴史的な背景から、名称変更を求める強い要望が生じました。

このような状況を受け、フランス領ギアナ出身の著名な女性政治家クリスチャーヌ・トビラ氏によって、1999年に空港名称の変更が正式に求められました。新しい名前として、かつてこの地を治めた17世紀の先住民の族長にちなむ「セペルー（Cépérou）」という候補も提案されましたが、最終的には、フランス領ギアナ出身の政治家として歴史に名を刻み、自由フランスへの支持を示したフェリックス・エブエ氏（1884-1944）の名を冠することが決定されました。これにより、空港は2012年に正式にカイエンヌ・フェリックス・エブエ空港へと改称されました。ただし、航空業界で使用される空港コード（CAY）は、改名後も変更されることなく引き続き使用されています。

利用状況

カイエンヌ・フェリックス・エブエ空港の年間旅客数は、近年増加傾向を示しています。例えば、2009年には年間約40万人であった利用客数は、エコツーリズムなどフランス領ギアナへの観光需要の高まりや、地域経済の活性化などを背景に、2012年には49万5千人にまで増加しました。この空港は、一般的な商業利用や観光客の受け入れだけでなく、フランス領ギアナに設置されているギアナ宇宙センターに関わる人々の主要なアクセスポイントとしても機能しています。ロケット打ち上げに関与する技術者や関係者、国内外からのメディアなどが頻繁に利用しており、ギアナ宇宙センターの運営を担う企業であるアリアンスペースが、顧客や報道関係者向けに特別にチャーター便を運航することもあります。

施設

この空港は、海抜わずか24フィート（約7メートル）の場所に位置しています。主要な施設として、長さ3200メートル、幅45メートルのアスファルト舗装された滑走路を1本備えており、ボーイング747型機を含む大型機の離着陸にも対応可能です。旅客用の駐機スペースとしては、ボーディングブリッジが設置された大型機対応のスポットが5か所設けられています。これらに加え、小型機やヘリコプター用の駐機スペースも10か所以上あります。旅客ターミナルビルは、約12,000平方メートルの広さを持ち、旅客サービスに必要な施設が整えられています。なお、軍事利用のための駐機スポットは、民間の利用エリアとは分離され、空港敷地の端に独立して配置されています。

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