カイザースヴェルト包囲戦 (1702年)

カイザースヴェルト包囲戦：スペイン継承戦争における攻防

カイザースヴェルト包囲戦は、スペイン継承戦争中の1702年4月18日から6月15日にかけて、ニーダーライン地方の要衝カイザースヴェルトを舞台に繰り広げられました。この戦いは、神聖ローマ帝国元帥ナッサウ＝ウジンゲン侯ヴァルラト率いるプロイセンとオランダの連合軍（総勢3万8千人、大砲120門）が、フランス軍が守るカイザースヴェルト要塞を包囲、攻略したものです。

戦いの背景

フランス軍は前年、カイザースヴェルトを抵抗を受けることなく占領していました。オランダにとって、この要塞の奪還は、同じくフランスに占領されていたスペイン領ネーデルラントへの進軍よりも優先度の高い目標でした。カイザースヴェルトは戦略的に重要な地点であり、ここを確保することで、オランダはライン川沿いの支配権を強化し、フランスの勢力拡大を阻止できると考えました。

攻城戦の経過

包囲戦は、オランダの攻城戦専門家メンノ・フォン・クーホルンが不在の中、拙劣に進められました。連合軍は多くの死傷者を出し、作戦は遅延を余儀なくされました。特にプロイセン軍は、火薬、弾薬、工兵、攻城砲などの物資が不足しており、オランダ軍からの支援に頼る状況でした。また、オランダ軍の包囲線が急速に進みすぎたため、プロイセン軍が追いつけないという問題も発生しました。さらに、フランス軍の増援や悪天候も重なり、5月に予定されていた要塞への強襲は延期を繰り返しました。

砲撃は4月18日に開始され、オランダ軍は1週間以内に外壁を占拠することを目指しましたが、実際に強襲が行われたのは6月9日でした。フランス守備軍の指揮官ブランヴィユ侯爵ジュール＝アルマン・コルベールは、6月10日にフランス元帥ルイ・フランソワ・ド・ブーフレールに宛てた報告で、同盟軍の強襲部隊が斜堤で「草刈り人の大鎌にかかった草のように」撃破されたと述べています。要塞の守備を担った工兵は、セバスティアン・ル・プレストル・ド・ヴォーバンの助手ルイ・フィレでした。

降伏とその後

駐留軍は最終的に6月15日に降伏しました。しかし、同盟軍は6月9日だけで2,800人（うち2,101人はオランダ軍）もの死傷者を出し、ヴォーバンが単なる「穴」と呼んだ要塞を攻略するのに2か月もの時間を要しました。降伏後、駐留軍は栄誉をもって要塞から退去しました。

戦いの意義

カイザースヴェルト包囲戦は、スペイン継承戦争における一局面に過ぎませんが、当時の攻城戦の困難さ、物資の重要性、指揮官の能力、そして何よりも兵士の犠牲を浮き彫りにしています。この戦いを教訓に、後の軍事戦略や兵器の開発に影響を与えたと言えるでしょう。

参考文献

Bodart, G. (1908). Militär-historisches Kriegs-Lexikon (1618-1905). Vienna: C.W. Stern
Ostwald, Jamel (2006) (英語). Vauban Under Siege: Engineering Efficiency and Martial Vigor in the War of the Spanish Succession. Brill. ISBN 978-9004154896

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