カイス・サイード

カイス・サイード：チュニジア大統領の経歴と政治姿勢

カイス・サイード（Kais Saïed、قيس سعيد）は、1958年2月22日生まれのチュニジアの政治家、法学者であり、現在チュニジアの大統領を務めています。彼は、その経歴と独特な政治姿勢で、チュニジア国内外から注目を集めています。

生い立ちと学歴

サイードは、ボン岬半島のベニ・ヒヤールという町で生まれました。彼の家族は、医学界で著名な人物を輩出しており、父方の叔父ヒシャーム・サイードは、シャム双生児の分離手術で知られる小児外科医でした。

サイードは、チュニス大学で法学の教授として教鞭を執り、1990年から1995年までチュニジア憲法学会の事務局長、1995年からは副会長を務めました。また、スース大学法学部長やアラブ連盟の法律顧問なども歴任しています。

ジャスミン革命と新憲法制定への関与

2011年、チュニジアでジャスミン革命が起こり、ザイン・アル＝アービディーン・ベン・アリー政権が崩壊しました。この革命は「アラブの春」の先駆けとなりました。2014年には、チュニジアの新憲法草案への助言を行う専門家委員会が設けられ、サイードはその一員として貢献しました。

大統領選挙と当選

2019年の大統領選挙に、サイードは無所属の社会保守主義者として立候補しました。彼は、若者を中心に幅広い支持を集め、「道徳的または経済的」腐敗との闘いを掲げました。第一回投票で最多得票を獲得し、決選投票では72.71%の票を得て大統領に当選しました。サイードは、チュニジア独立後に生まれた最初の大統領となりました。

大統領としての政策と論争

大統領就任後、サイードは経済不況や新型コロナウイルス感染症対策をめぐり、当時の首相と対立しました。2021年には首相を解任し、議会機能を停止するなど、強権的な措置を取りました。これらの行動は、国内外から独裁体制への移行を懸念する声を引き起こしました。

彼は、新憲法制定に向けた国民投票を実施し、人民議会選挙を行うことを表明しましたが、議会の停止状態を維持したため、批判を受けました。また、憲法裁判所の不在や批判的な裁判官の罷免など、三権分立が機能していない状況も指摘されています。

政治姿勢と人物像

サイードは、社会保守主義的な立場を取りながらも、自らをイスラーム主義者とは見なしていません。彼は、正則アラビア語を使用し、法と秩序を重んじる姿勢から「ロボコップ」というあだ名で呼ばれることもあります。一方で、選挙戦では「庶民の男」を自称し、ポピュリスト的なアピールも行いました。

彼は、既成政党に属さない法学者出身であり、利権に関わらない清廉潔白なイメージが強く、「清廉な独裁者」とも呼ばれています。2023年8月には首相を解任し、後任を指名するなど、リーダーシップを発揮しています。

2024年10月6日に執行された大統領選挙では得票率90.7％で再選されました。しかし、投票率は28.8％と大幅に低下しており、野党のボイコットなどが影響したと考えられています。

サイードは、裁判官のイシュラーフ・シェビールと結婚し、3人の子供がいます。

カイス・サイード大統領の政治姿勢は、チュニジアの将来に大きな影響を与える可能性があります。彼の今後の動向から目が離せません。

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