カイパー空中天文台

カイパー空中天文台（Kuiper Airborne Observatory）は、アメリカ航空宇宙局（NASA）が1974年から1995年まで運用していた、航空機に搭載された天体望遠鏡システム、いわゆる空中天文台です。この天文台は、著名な天文学者ジェラルド・カイパーに敬意を表して命名されました。

地上からの天体観測は、大気による光の散乱や吸収の影響を大きく受けてしまいます。特に、赤外線領域での観測は、大気中の水蒸気による吸収が非常に大きいため、地上からの観測が困難です。そこで、望遠鏡を航空機に搭載し、高度の高い場所から観測することで、これらの大気の影響を大幅に低減することが可能になります。カイパー空中天文台は、このようなコンセプトに基づいて開発されました。

カイパー空中天文台に使用された航空機は、アメリカ空軍で輸送機として運用されていたC-141の民間向けデモ機であるL-300を改造したものです。1973年から改装が開始され、翌1974年2月には観測を開始しました。機体の前部には観測用の開口部が設けられており、内部には口径91.5cmの反射[[望遠鏡]]が搭載されていました。この望遠鏡は、主に赤外線分光観測を行うことを目的としていました。観測時には、高度1万メートル以上の成層圏を飛行し、大気の影響を最小限に抑えた観測を実現していました。

カイパー空中天文台は、その運用期間中に数々の重要な発見を成し遂げました。1977年には天王星の環を発見し、1988年には冥王星の大気観測に成功しました。また、エッジワース・カイパーベルト天体の観測においても、大きな成果を上げています。これらの発見は、太陽系の構造や進化に関する理解を深める上で重要な貢献となりました。

カイパー空中天文台は、その運用を終えた後、2006年時点ではカリフォルニア州モフェットにあるエイムズ研究センターで保管されています。その後継機として、ボーイング747SPを改造した成層圏赤外線天文台（SOFIA。Stratospheric Observatory for Infrared Astronomy）が開発されました。SOFIAは2007年4月に初飛行を行い、カイパー空中天文台の成果を受け継ぎ、現在も天体観測を行っています。このように、カイパー空中天文台は、その後の空中天文台開発の礎を築いた重要な存在であると言えるでしょう。

カイパー空中天文台は、大気の悪影響を回避するために航空機を利用するという画期的なアイデアを実現しただけでなく、天文学の進歩に大きく貢献しました。その成果は、後継機であるSOFIAに引き継がれ、今もなお天文学の発展を支え続けています。

外部リンク
NASAによる解説（英語）

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