カイロス (ロケット)

カイロス：小型衛星打ち上げロケットの挑戦

日本の宇宙開発において、民間企業による革新的な取り組みとして注目を集めるのが、スペースワン社が開発した小型衛星打ち上げロケット「カイロス (KAIROS)」です。本稿では、カイロスの開発背景、技術的特徴、打ち上げ状況、そして今後の展望について詳述します。

開発の背景

カイロスの開発は、「大型衛星を少数打ち上げるのではなく、小型衛星を大量に打ち上げる」という革新的な発想に基づいています。従来のロケット打ち上げ方式とは異なり、迅速かつ頻繁な打ち上げを可能にすることで、小型衛星市場における競争優位性を確立することを目指しています。そのため、契約から打ち上げまでの期間を最短化し、打ち上げ頻度を最大化することを目標としています。

技術的特徴

カイロスは、小型軽量化と固体燃料の使用によって、発射準備期間の短縮を実現しています。衛星の受け取りからわずか4日で打ち上げ可能な体制を構築し、迅速なサービス提供を可能にしています。さらに、GO/NOGO判断や異常発生時の指令破壊といった管制手順を自動化することで、省人化による効率性向上も図っています。

ロケットの名称であるKAIROSは「Kii-based Advanced & Instant ROcket System」の頭文字から取られており、ギリシャ神話における「時間」と「機会」の神に由来しています。これは、同社が「時間を味方につけて市場を制する」という強い意志を反映していると言えるでしょう。また、ギリシャ語で「チャンス」を意味する言葉でもあることから、好機を捉えて事業を成功に導くという思いも込められています。

製造面では、キヤノン電子が駆動系や電子制御に関わる部品の一部を供給し、IHIエアロスペースの富岡事業所で製造されています。フェアリングはミッションに合わせて4種類の構成が計画されています。

カイロス増強型

軌道投入能力の向上を目指し、「カイロス増強型」の開発も進められています。これは、第3段エンジンを固体ロケットから3t級メタンエンジンに変更することで、高度500kmの太陽同期軌道に250kgのペイロードを打ち上げることが可能になります。

打ち上げと失敗

カイロスの初号機は、2024年3月9日に和歌山県串本町のスペースポート紀伊から打ち上げられる予定でしたが、船舶の警戒区域侵入により延期され、3月13日に打ち上げられました。しかし、打ち上げ直後に爆発し、失敗に終わりました。原因究明の結果、第1段ロケットの推力が予想よりも数パーセント不足していたことが判明しました。ロケットは自律的に飛行を中断しましたが、正常な飛行が可能な範囲内であった可能性も示唆されています。

2号機

初号機の失敗を受け、スペースワン社は2024年10月9日、2号機の打ち上げ計画を発表しました。2号機では、推進系の設計変更は行わず、飛行正常範囲の見直しを行うことで対応しています。2024年12月14日に、マイクロサット1基と3Uキューブサット4基の計5基を搭載して打ち上げられる予定です。

打ち上げ場所

カイロスの打ち上げ場所は、和歌山県東牟婁郡串本町（一部は那智勝浦町）にあるスペースポート紀伊です。工場からの陸路輸送が可能で、南と東が開けた太平洋に面していること、そして地元の協力体制が整っていたことが選定理由として挙げられています。

今後の展望

カイロスの開発と打ち上げは、日本の民間宇宙開発における重要な一歩と言えるでしょう。初号機の失敗は、技術的な課題を示した一方で、迅速な原因究明と改善策の提示は、今後の開発に繋がる貴重な経験となります。2号機以降の成功によって、小型衛星打ち上げ市場におけるスペースワンの存在感はさらに高まることが期待されます。今後の更なる技術革新と安全性の向上によって、日本の宇宙開発に大きく貢献していくことが期待されます。

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