小型衛星

小型衛星の概要と歴史

小型衛星とは、その名の通り、サイズが比較的小さい人工衛星です。明確な重量制限はありませんが、一般的には1000kg以下、あるいは500kg以下とされています。宇宙開発初期はロケット性能の制約から必然的に小型衛星が開発されていましたが、ロケット技術の発展に伴い、大型衛星が主流となりました。しかし、大型衛星は開発コストや期間が膨大になる上、打ち上げ失敗のリスクも高まるという問題がありました。

1990年代以降、技術革新と政治・経済情勢の変化により、「Smaller, Faster, Cheaper（より小さく、より速く、より安価に）」というコンセプトのもと、小型衛星の開発・利用が盛んになりました。特にアメリカでは、イリジウム衛星やニュー・ミレニアム計画、SMEXなど、小型衛星開発計画が次々と発表されました。教育機関においても、イギリスのサリー大学が設立したサリー・サテライト・テクノロジー社を皮切りに、大学での教育・研究目的の小型衛星開発が始まり、1999年にはCubeSatが開発されて以降、世界中で小型衛星の教育利用が進んでいます。

近年は観測機器の進歩により、数十年前の大型衛星と同等の能力を持つ超小型衛星も登場しています。ナノサットクラス（5kg以下）でもスラスターを搭載する衛星も開発され、衛星コンステレーションの構築や軌道変更、運用終了時の大気圏再突入処分などへの期待が高まっています。小型衛星の打ち上げは、主に他の衛星と相乗りするピギーバック方式で行われてきました。しかし、近年は打ち上げ機の性能向上により、余剰能力が増加し、打ち上げ機会も増加傾向にあります。

日本の小型衛星開発

日本初の人工衛星である「おおすみ」（1970年打ち上げ）は重量23.8kgの小型衛星でした。その後、日本アマチュア無線連盟による「ふじ1号」（1986年）、千葉工業大学による鯨生態観測衛星（2002年）など、大学や民間企業による小型衛星開発が進められてきました。JAXAも、技術実証や若手研究者育成を目的に「れいめい」や「μ-LabSat」などの小型衛星を開発しています。

2008年には超小型衛星ベンチャー企業のアクセルスペースが設立され、民間企業による小型衛星開発が活発化しました。また、国立天文台、東京大学、京都大学による超小型位置天文観測衛星「ナノ・ジャスミン」（2022年打ち上げ予定）など、本格的な科学利用も始まっています。公益財団法人無人宇宙実験システム研究開発機構が開発する地球観測用小型衛星ASNAROは海外輸出も目指しており、光学衛星（2014年）、レーダー衛星（2018年）が既に打ち上げられています。大阪工業大学が開発した世界初の電気推進ロケットエンジンを搭載した超小型人工衛星「プロイテレス」も、2012年にインドから打ち上げられています。

小型衛星の分類

小型衛星は重量によって、ミニサット（500kg以下）、マイクロサット（100kg以下）、ナノサット（10kg以下）、ピコサット（1kg以下）などに分類されます。ただし、これらの分類は資料によって異なる場合もあります。日本独自の分類では、「小型衛星（100kg～1000kg程度）」と「超小型衛星（100kg以下）」に分類されています。

超小型衛星の課題

超小型衛星は、ピギーバック方式による打ち上げが一般的ですが、この方式では主衛星が優先されるため、打ち上げ時期や軌道に制約が生じます。そのため、超小型衛星専用の打ち上げ手段の確立が今後の課題です。また、他国衛星との電波干渉問題や、宇宙用規格部品を使用していない場合が多く、信頼性や品質管理に課題があることも指摘されています。地上局の運用体制が不十分な場合もあり、予定より短期間で運用を終了せざるを得ないケースも見られます。機能停止した衛星はスペースデブリとなり、他の衛星や宇宙ステーションに悪影響を与える可能性もあるため、適切な軌道離脱措置が重要です。

参考文献

川島レイ『キューブサット物語~超小型手作り衛星、宇宙へ』エクスナレッジ、2005年
宮崎康行『人工衛星をつくる−設計から打ち上げまで−』オーム社、2011年
* 東北大学超小型衛星開発チーム『マイクロサット開発入門』東北大学出版会、2011年

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