カイロス (ロケット)

カイロス：日本の小型衛星打ち上げロケット

2021年に設立された日本の宇宙スタートアップ企業、スペースワンが開発した小型衛星打ち上げロケット「カイロス (KAIROS)」は、世界最短の契約期間と最高頻度の打ち上げを目指した画期的なシステムです。ギリシャ神話における「時間」と「機会」の神にちなんで名付けられたこのロケットは、小型衛星の大量打ち上げという新しい市場を開拓しようと試みています。

開発の背景と理念

従来の大型ロケットによる衛星打ち上げとは異なり、カイロスは小型衛星を大量に、そして迅速に打ち上げることをコンセプトとしています。これは、近年増加している小型衛星需要の高まりに対応するためです。契約から打ち上げまで最短期間を実現するため、固体燃料ロケットを採用し、発射準備期間の大幅な短縮を図りました。さらに、自動化された管制システムや自律的な異常時対応により、省人化と効率化も実現しています。

ロケットの設計と製造

カイロスは、複数のモジュールから構成され、フェアリングはミッションに合わせて4種類の構成が用意されています。キヤノン電子が一部部品を供給し、IHIエアロスペース富岡事業所で製造されています。開発中の「カイロス増強型」は、第3段エンジンを3トン級メタンエンジンに変更することで、軌道投入能力の向上を目指しています。打ち上げ能力は高度500kmの太陽同期軌道に250kgとなっています。

打ち上げ場所と失敗

和歌山県串本町にあるスペースポート紀伊から打ち上げられます。この場所が選ばれたのは、工場からの陸路輸送が可能で、南と東に開けた太平洋に面しているため、安全性の確保と地元の協調関係を考慮した結果です。

2024年3月9日に予定されていた初号機の打ち上げは、直前の天候不良や船舶の侵入により延期され、3月13日に実施されました。しかし、打ち上げ後数十メートルで爆発し、失敗に終わりました。原因調査の結果、第1段ロケットの推力が予想より数パーセント不足していたことが判明しました。この推力不足により、ロケットは飛行正常範囲を外れたと判断し、自律破壊システムが作動したと結論づけられています。

2号機と今後の展望

初号機の失敗を踏まえ、2号機では飛行正常範囲の設定を見直すことで対応しました。2024年10月には、マイクロサット1基と3Uキューブサット4基を搭載した2号機の打ち上げが計画されていましたが、天候悪化により延期されました。

カイロスの開発と打ち上げは、日本の民間宇宙開発における大きな挑戦です。小型衛星市場の急成長を背景に、頻繁で迅速な打ち上げを実現しようとするスペースワンの取り組みは、今後の宇宙産業の発展に大きく貢献すると期待されています。今後の2号機の打ち上げ成功と、カイロスが小型衛星打ち上げの新たなスタンダードとなることが期待されます。成功すれば、日本の宇宙開発における民間企業の役割がより一層大きくなるでしょう。

技術的特徴

・固体燃料ロケットの採用による迅速な発射準備
・自動化された管制システムと自律的な異常時対応
・ミッションに合わせた多様なフェアリング構成

今後の課題

・信頼性の向上
・コスト削減
・国際的な競争力強化

カイロスは、日本の民間宇宙開発の挑戦を象徴するロケットと言えるでしょう。今後の打ち上げ成功と技術的進歩に期待が集まっています。

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