カサ・ミラ

カサ・ミラは、バルセロナの目抜き通りであるグラシア通りに堂々とそびえ立つ、アントニ・ガウディの傑作の一つです。ガウディが54歳の時に設計を手掛け、1906年から1910年にかけて実業家ペレ・ミラとその妻ルゼー・セギモンの邸宅として建設されました。

この建築物の最大の特徴は、その独特なデザインにあります。直線部分を全く持たない波のような外観は、まるで砂丘や溶岩のうねりを思わせ、従来の建築様式とは一線を画しています。地中海をイメージしたという外観の曲線は、見る者を魅了します。バルコニーは一つ一つ異なり、鉄という硬質な素材でありながら、まるで海藻のように柔らかく、有機的な造形をしています。内部に入ると、天井や壁も波打ち、まるで海底にいるかのような不思議な感覚に包まれます。そして、屋上には、独特な形状の煙突や階段室が立ち並び、その風景は月面や夢の中のようだと評されることもあります。

ガウディは、建物の曲線について問われた際、「ここから見える山々の形に結びついている」と答えたとされています。この言葉からも、彼が自然からインスピレーションを得ていたことがうかがえます。

カサ・ミラは、その芸術性の高さから、建築物というよりも彫刻と見なされることもあります。実用性に欠けるという批判もかつてはありましたが、その圧倒的な芸術性は誰もが認めるところです。建設当時は、その奇抜な外観から「石切場（ラ・ペドレラ）」という不名誉なニックネームで呼ばれていましたが、今日ではバルセロナを代表する歴史的建造物として、世界中から多くの観光客が訪れています。

現在は内部がガウディ建築に関する博物館となっており、入場料を支払えば、住居部分や屋上を見学することができます。建設当時の家賃は、一般職人の月給の約10倍にあたる1500ペセタと非常に高額で、その評判の悪さも相まって、なかなか借り手が見つからなかったそうです。そのため、「3世代に渡って値上げなし」という条件で契約が結ばれ、現在でも家賃は約15万円に据え置かれています。広さは約300平方メートルで、全8室あり、現在も4世帯が実際に生活しています。

世界遺産登録について

カサ・ミラは、1984年に「バルセロナのグエル公園、グエル邸、カサ・ミラ」としてユネスコの世界遺産に登録されました。その後、2005年にサグラダ・ファミリアやカサ・バトリョなどが拡大登録された際に、登録名称が「アントニ・ガウディの作品群」に変更されました。

この世界遺産は、以下の登録基準を満たしていると評価されました。

(1) 人類の創造的才能を表現する傑作であること。
(2) ある期間を通じて、またはある文化圏において、建築、技術、記念碑的芸術、都市計画、景観デザインの発展に関し、人類の価値の重要な交流を示すものであること。
(4) 人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積、または景観の優れた例であること。

カサ・ミラは、その独創的なデザインと、ガウディの芸術性が融合した、他に類を見ない建築物として、世界中から愛されています。

関連項目

アントニ・ガウディの作品群
グエル公園
サグラダ・ファミリア
カサ・バトリョ
スペインの世界遺産
世界遺産の一覧 (ヨーロッパ)

外部リンク

スペイン政府観光局 - カサ・ミラ （日本語）
* バーチャルツアー

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