カザフ自治ソビエト社会主義共和国

カザフ自治ソビエト社会主義共和国：ソ連邦における自治共和国の歴史

カザフ自治ソビエト社会主義共和国（以下、カザフASSR）は、ロシア・ソビエト連邦社会主義共和国連邦（ソ連）内に1925年から1936年まで存在した自治共和国です。キルギス自治ソビエト社会主義共和国として1920年に設立され、その後、1925年にカザフASSRと改称されました。国歌はインターナショナルでした。

地理的範囲と境界: カザフASSRは、広大な領土を有していました。1932年の時点では、西は下ヴォルガ地方、北東はウラル山脈と西シベリア、南はキルギス自治ソビエト社会主義共和国（1926～1936年）、南東は中華民国と接していました。その境界は、時代とともに変遷を遂げました。


歴史的変遷: カザフASSRの成立は、ソ連による中央アジア地域の統治政策における重要な転換点でした。1925年の改称は、カザフ民族のアイデンティティと自治権を認める一方で、ソ連の支配体制を強化する狙いがありました。1927年には、アルマトイが首都となりました。1928年には、既存の自治州が廃止され、13の郡と地区に再編されました。さらに、1932年には、6つの大きな領域（アクトベ、アルマトイ、東カザフスタン、西カザフスタン、カラガンダ、南カザフスタン）に分割されました。1934年には、北西部の小規模な領域がオレンブルク地方に編入されました。これらの行政区分変更は、ソ連政府による効率的な統治と資源管理を目的としていたと考えられます。


経済状況: カザフASSRの経済は、農業と畜産業が中心でした。1931年の統計によると、製造業の総生産におけるシェアは36.8％に達し、農業の近代化が進められていました。しかし、この時代は集団化政策が強行され、多くの農民が集団農場に強制的に組み込まれました。その結果、穀物生産は増加しましたが、農民の生活は困難を極めたと推察されます。1932年には、農場の66％、播種面積の85.6％が集団化され、家畜の多くも集団農場に集められました。カザフスタンはソ連に穀物（主に小麦）の10％を供給していました。


交通網の発展: カザフASSRでは、鉄道網の整備が積極的に進められていました。1932年には鉄道の長さが5474キロメートルに達し、1927年の3241キロメートルから大幅な増加を示しました。これは、経済発展と行政管理の効率化に大きく貢献したと考えられます。


カザフSSRへの昇格: 1936年12月5日、スターリン憲法の制定に伴い、カザフASSRはソ連邦構成共和国に昇格し、カザフ・ソビエト社会主義共和国（カザフSSR）となりました。これは、カザフ民族の政治的地位向上を象徴する出来事であり、同時にソ連による中央アジア支配の強化をも意味していました。カザフASSRの歴史は、ソ連時代の民族政策と国家建設の複雑な過程を反映しており、その発展過程には、ソ連政府による支配とカザフ民族の自治という相反する要素が複雑に絡み合っていました。

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