カジミェシュ・セロツキ

カジミェシュ・セロツキ（1922年3月3日 - 1981年1月9日）は、ポーランドを代表する作曲家であり、ピアニストでもありました。彼の名前はカジミエルシ、カジミエシといった表記も見られます。セロツキは、第二次世界大戦後のポーランドにおける現代音楽の黎明期において、極めて重要な役割を果たした一人です。

パリでは、ラザール・レヴィからピアノを、そしてナディア・ブーランジェから作曲の指導を受けました。ポーランド帰国後、ヤン・クレンツ、タデウシュ・バイルトと共に「グループ49」を結成し、新しいポーランド音楽の方向性を模索しました。彼はピアニストとしても卓越した技量を持っていたと伝えられていますが、その演奏の音源は残念ながらほとんど残されていません。1981年に突然この世を去りましたが、その功績を称え、後に「カジミェシュ・セロツキ国際作曲コンクール」が創設されました。このコンクールでは、授賞式に必ず彼の作品が併せて演奏されています。

セロツキの初期の作品は、新古典的なスタイルを基調としています。例えば、「交響曲第1番」や「弦楽のためのシンフォニエッタ」、「ピアノソナタ」などがこの時期に作曲されました。「交響曲第1番」に見られる管打楽器の強烈な同音連打には、すでに後のセロツキの個性が萌芽として現れています。また、「ピアノ独奏のためのプレリュード組曲」では十二音技法を取り入れましたが、これは当時の前衛音楽で主流だった無調的な用法とは異なり、調性的な響きの上に装飾的に十二音を重ねるという独自のアプローチでした。この手法は、1950年代の一般的な音楽潮流からは大きく逸脱するものでした。

初期の作品の中には、習作的な性格の強いものや、他の作曲家からの影響が色濃く見られるものもありました。例えば、しばしば演奏される「トロンボーン協奏曲」（1953年）は、セロツキの円熟期の作風を代表するものではなく、むしろピアノ伴奏で演奏されることが多い比較的初期の作品です。また、ピアノ曲「任意に」には、カールハインツ・シュトックハウゼンの影響が指摘されており、彼が真に自己のスタイルを確立するには、ある程度の時間が必要でした。

セロツキが独自の音楽語法に到達し、その才能を世界に知らしめることになったのは、オーケストラのための「交響的フレスコ画」や「ドラマティック・ストーリー」、リコーダーとオーケストラのための「カデンツァ風協奏曲」、ソプラノとオーケストラのための「ニオベ」、そして2台ピアノとオーケストラのための「フォルテとピアノ」といった一連の作品群においてです。これらの作品では、独創的な音響ブロックを積み重ね、それを飽和するまで提示するという独自のスタイルが確立され、国際的に高い評価を得て、彼の創作は全盛期を迎えます。一方で、6人の打楽器奏者のための「コンティヌーム」や、4人の奏者のための「スイングする音楽」といった室内楽作品には、管弦楽作品からは想像しにくいような、ユーモラスでコミカルな感性が光る一面も持ち合わせていました。

1970年代後半に入ると、前衛音楽の流行に変化が見られるようになりますが、セロツキはポーランド国内でいち早くライブ・エレクトロニクスの研究に取り組みました。この研究成果は、ピアノ、ライブ・エレクトロニクス、オーケストラのための大作「ピアノフォニー」（1976-1978年）に結実しました。この作品は、最新のライブ・エレクトロニクス技術を導入する一方で、ソナタ形式のような伝統的な楽曲構成を取り入れたり、後半にトッカータ風の急速なパッセージを配置するなど、新ロマン主義的な傾向も見られるなど、多様な要素が融合した意欲的な作品です。

しかし、「ピアノフォニー」の作曲中、彼は癌を患っており、この作品の完成後間もなく、1981年に58歳でその生涯を閉じることとなりました。セロツキは短い生涯ながらも、ポーランド現代音楽の発展に多大な貢献をし、その独創的な作品群は今なお多くの聴衆を魅了し続けています。

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