カスターズ・リベンジ

カスターズ・リベンジ：歴史に残る問題作

『カスターズ・リベンジ』（Custer's Revenge）は、アメリカのミスティーク社が開発し、1982年に発売されたAtari 2600用のアダルトゲームです。このゲームは、ジョージ・アームストロング・カスター将軍を主人公とし、アメリカ先住民の女性への性的暴行をテーマにしたことで、発売当時から大きな議論と非難を浴びました。

ゲーム内容

ゲームのジャンルはアクションです。プレイヤーは、カウボーイハットを被り、ペニスが勃起した裸の男性（カスター将軍）を操作します。彼は、画面右側に固定されたインディアン女性に近づくため、画面上から落ちてくる矢を避けながら進みます。女性の前で腰を振ることでスコアが加算され、50ポイント獲得するごとにスタート地点に戻り、ゲームの進行速度が上がっていくという内容です。このゲーム内容は、明らかに性的暴行を連想させ、大きな社会問題となりました。

リリースと論争

発売時、本作は「未成年者には販売不可」と警告表記がされたパッケージで、他のゲームより高価な49.95ドルで販売されました。パッケージには「子供が本作について尋ねてきたら、カスター将軍と少女がただ踊っているだけだと教えてください」という皮肉めいたメッセージも記載されていました。

本作は、全米女性組織やインディアン団体から猛烈な非難を受けました。反ポルノ活動家のアンドレア・ドウォーキンは、本作を人種差別とポルノグラフィーが結びついた悪例として批判しました。また、ある活動家が国会議員に販売禁止を求めた結果、オクラホマシティでは販売が禁止されました。しかし、この騒動が逆に注目を集め、本作はミスティーク社の他のアダルトゲームの2倍に相当する80,000本を売り上げました。

メーカーのミスティーク社は、このゲームを「楽しませるため」に作ったと主張し、デザイナーのジョエル・ミラーは、カスターが女性と合意の上で性行為に及んでいると述べました。しかし、これらの主張は全く受け入れられず、ゲームに対する批判は収まりませんでした。

批評

『カスターズ・リベンジ』は、多くのゲームレビューで酷評されています。雑誌『エレクトロニック・ゲーミング・マンスリー』のSeanbabyは、本作を「最悪なゲーム」の9位に選びました。オーストラリアのレビューサイト「PC Authority」は、本作を世界で最も悪い暴力的なゲームの一つとして挙げ、その「独特さ」を指摘しました。

レビューサイト「Classic Gaming」のFragmasterは、本作のゲーム性を「かなり悪い」と評価し、グラフィックと音はAtari 2600の基準からすると及第点としながらも、ゲーム業界の異質さを示す例として言及しました。また、「GameSpy.com」は、開発元の意図に関わらず、レイプを想起させる内容は擁護できないと批判し、本作を「性的虐待か愚かさの記念碑」と断定しました。

ゲームレビューサイト「allgame」のSteve Honeywellは、グラフィック、音楽、楽しさ、リプレイ価値、総合評価の全てで最低評価の星1つを与え、「分別に欠け、レイプを滑稽で気持ちの良いものとして描いている」と酷評しました。さらに「Games.net」は、本作のインディアン女性を「不快なほど性的なゲームキャラクター」の5位に選出しました。

日本の書籍『超エロゲー』の著者である多根清史は、本作のドット絵を批判しながらも、当時のAtari 2600のゲームのドット絵は全般的に劣悪であるとし、内容については「最低な要素が凝縮されている」と指摘しました。アダルトゲームの歴史をまとめた書籍『エロゲー文化研究概論 増補改訂版』では、本作が凌辱をテーマにしたビデオゲームの最初期の一つとして言及されています。

まとめ

『カスターズ・リベンジ』は、その内容の過激さから、ゲーム史に残る問題作として広く知られています。ゲームとしての出来の悪さだけでなく、人種差別や女性蔑視といった倫理的な問題も多く含んでおり、ゲーム業界における倫理観を問う重要な事例として、今もなお語り継がれています。本作は、娯楽の自由と表現の自由、そして社会的な責任について考える上で、重要な教訓を与えてくれます。

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