カスミサンショウウオ

カスミサンショウウオ（霞山椒魚）

カスミサンショウウオ（Hynobius nebulosus）は、サンショウウオ科に属する両生類の一種です。この種は日本の九州北部および西部に特に分布しており、鹿児島、熊本、佐賀、長崎、福岡などの地域で見ることができます。長崎がこの種の模式産地であり、最初に発見された個体はシーボルトによって収集されたメスの成体です。

形態的特徴

カスミサンショウウオの体長はオスが8.4〜11.9センチメートルに達し、頭胴長は4.7〜6.7センチメートルです。この種の特筆すべき特徴として、短い尾があり、尾の長さは頭胴長の約69.5パーセントに相当します。体側面には左右それぞれに13本の肋条（皺）が見られ、種小名の「nebulosus」はラテン語で「雲状の」を意味します。尾の背面と腹面には黄色い筋模様が存在します。

頭部は幅広く、上顎の中央部には歯の列（鋤骨歯列）があり、これが「V」字型を形成しています。四肢は比較的短く、後肢には5本の趾があります。卵嚢は柱状の構造物を持たず、表面には明確な筋が見られません。幼生のサイズは全長2.89〜3.15センチメートルで、幼生は爪を持たず、身体の背面は淡い褐色に黒い斑点があります。

分類と遺伝的変異

かつてカスミサンショウウオは岐阜県以西から九州にかけて広く分布する種とされていましたが、最近の研究では形態的および遺伝的な変異があまりにも多く、多くの隠蔽種が存在していると考えられるようになりました。2019年には、シノニムと考えられていたヤマトサンショウウオ（H. vandenburghi）が復活し、さらにアブサンショウウオ、アキサンショウウオ、ヤマグチサンショウウオ、イワミサンショウウオ、サンインサンショウウオ、セトウチサンショウウオ、ヒバサンショウウオといった新種も認識されるようになりました。この結果、カスミサンショウウオは狭い範囲に分布する種として理解されています。

生態

カスミサンショウウオの繁殖期は壱岐や長崎では1月下旬から始まり、壱岐では3月下旬まで継続します。乾燥した水たまり、池、溝、水路、休耕田などの水源で繁殖を行うことが観察されています。

人間との関係

この種は森林伐採や道路建設、さらには砂防ダムの建設などによって生息地が脅かされ、さらにはペットとしての乱獲により、個体数は減少してきています。日本の環境省ではこの種を絶滅危惧II類（VU）に分類しており、2022年には特定第二種国内希少野生動植物種に指定されました。このため、捕獲や譲渡を目的とした行為が法律で禁止されています。また、鹿児島県では2014年に県指定の天然記念物として保護されています。

結語

カスミサンショウウオはその生態や形態に特長を持つ日本独自の種であり、環境変化に敏感です。現在、個体数の減少が進んでいるため、保全活動が求められています。このような両生類が私たちの自然環境にとっていかに重要であるか、理解を深めることが大切です。

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