カテナン

カテナンの概要と研究の進展

カテナン（英: catenane）は、環状構造を持つ分子が鎖のように繋がった特異な形態の分子集合体です。この名称は、ラテン語の「catena」（鎖）に由来しています。カテナンは、2つの環が結合しているものを「2カテナン」、3つの環が結合するものを「3カテナン」と呼称されており、これまでに7つの環が結合した「7カテナン」まで合成されています。

カテナンの最初の合成

カテナンの歴史は1960年に始まりました。アメリカのベル研究所に所属していたE・ワッサーマンが初めてカテナンを合成し、その成果を米国化学会誌に報告しました。彼は、特定の重水素で標識された34員環のシクロアルカン（C34H63D5）を用いて、長鎖のジエステルにアシロイン縮合反応を行った際に、新たな重水素化物が生成されることを確認しました。この反応は、得られた生成物の構造解析により、カテナンであることが明らかになりました。

合成技術の発展

最初のカテナン合成以降、長らくその合成は難しいと考えられており、研究はあまり進展しませんでした。しかし、ジャン＝ピエール・ソヴァージュによって開発された金属錯体を使ったテンプレート法が登場すると、カテナンの合成が飛躍的に効率化されることとなりました。この技術により、カテナンだけでなく、ロタキサンやボロメアンリング、ノットなどの異なる超分子化合物も容易に合成できるようになりました。

成功した新たな合成法

また、フレイザー・ストッダートは分子間におけるπ-π相互作用を利用して、より効率的にカテナンを生成する方法を確立しました。彼が合成したカテナンの中で特に注目されるのが、五つの環が繋がったオリンピアダンです。ストッダートはこの業績により、2016年にはノーベル化学賞を受賞しました。

藤田誠の研究も注目されており、彼は偶然に窒素を含む分子を金属と結合させる過程でカテナンを合成しました。この手法は、収率が90%と非常に高いのが特徴です。また、メタセシス反応を利用したカテナン合成は、収率95%を達成しています。実用的なメタセシス触媒の開発に寄与したロバート・グラブスは、2005年にノーベル化学賞を受賞しています。

カテナンの応用

カテナンは、その特異な構造から分子シャトルや分子モーターなど、いわゆるナノマシンの素材としての研究が進められています。カテナンと似た機能を持つ超分子としてロタキサンが挙げられ、これは分子に動きを与える技術の一環として注目されています。これらのナノマシンは、生物学的な応用や工業用の技術革新において、大きな可能性を秘めています。

参考文献

• - 分子の知恵の輪・カテナン - 有機化学美術館
• - 分子の知恵の輪・カテナン(2) - 同上

カテナンに関する研究は、未来の科学技術の発展において重要な位置を占めることが期待されています。

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