カトリック連盟

カトリック連盟：カトリック信仰防衛と三十年戦争

カトリック連盟は、1609年に神聖ローマ帝国において、プロテスタント同盟に対抗するために結成されたカトリック諸侯による同盟です。「カトリック信仰の防衛と帝国の平和」を掲げ、当初はプロテスタント同盟の政治的対抗組織として活動しました。しかし、宗教対立が激化し、三十年戦争へと発展する中で、重要な役割を果たすことになります。

結成の背景

1555年のアウクスブルクの和議によって、ドイツにおけるルター派とカトリックの対立は一時的に沈静化しました。この和議では、領主が自領の宗教を選択し、領民にその信仰を強制する「領邦教会制度」が定められました。しかし、この和議は根本的な解決には至らず、カルヴァン派の台頭など新たな問題も生じました。

1606年、ドナウヴェルトでカトリック教徒の行列がルター派住民によって妨害される事件が発生しました。皇帝ルドルフ2世は、バイエルン公マクシミリアン1世にこの事件の鎮圧を命じ、マクシミリアンはドナウヴェルトを占領しました。この出来事を契機に、1608年にプロテスタント同盟が結成され、それに対抗する形で、1609年7月10日にマクシミリアン1世を中心としてカトリック連盟が結成されました。

カトリック連盟の活動

カトリック連盟は、加盟者間の紛争を禁じ、相互援助を義務付けるものでした。マクシミリアン1世が指導者となり、アウクスブルク司教、パッサウ司教、ヴュルツブルク司教らが顧問を務めました。連盟は、当初から体制が整っていたわけではなく、資金不足や組織運営の問題を抱えていました。しかし、ローマ教皇やスペイン国王からの支援を受け、徐々に組織を強化していきました。

ユーリヒ＝クレーフェ継承戦争やアルザスにおけるプロテスタント同盟の活動などを受け、カトリック連盟とプロテスタント同盟の対立は深まり、戦争は不可避な状況となっていきました。1613年にはオーストリア大公国が連盟に加盟し、その目的は「キリスト教社会の合法的防衛」へと拡大しました。

三十年戦争における役割

1618年、ボヘミアでプロテスタント貴族が皇帝の代官を窓から投げ落とすというプラハ窓外投擲事件が発生し、三十年戦争が勃発しました。カトリック連盟は、皇帝軍を支援し、ボヘミアの反乱を鎮圧しました。1620年の白山の戦いでは、ティリー伯率いる連盟軍がプロテスタント軍に勝利し、皇帝の支配を回復しました。

その後、連盟軍は中部ドイツで戦い、ミンゴロスハイムの戦いでの敗北を喫したものの、ヴィンプフェンの戦いでは勝利を収めました。プファルツ選帝侯領の首都ハイデルベルクを占領し、プロテスタント勢力を一時的に弱体化させました。

1625年、デンマーク王クリスチャン4世がプロテスタントを支援するために参戦しましたが、1626年のルッターの戦いで連盟軍は大勝利を収めました。これにより、カトリック連盟はドイツ全土に影響力を拡大し、全盛期を迎えました。

しかし、1630年にスウェーデン王グスタフ・アドルフが参戦すると、戦況は一変します。連盟軍は、スウェーデンを支援するマグデブルクを包囲し、陥落させましたが、その際の虐殺は多くの諸侯の反発を招き、反皇帝勢力を強化する結果となりました。

1631年のブライテンフェルトの戦いで、連盟軍はスウェーデン軍に大敗を喫し、翌1632年にはレヒ川の戦いでティリー伯が戦死しました。これにより、カトリック連盟の主導権は失われ、グスタフ・アドルフ率いるプロテスタント同盟へと移りました。

カトリック連盟の終焉

1635年、皇帝フェルディナント2世は、プロテスタント諸侯との間でプラハ条約を締結し、内戦を終結させようとしました。この条約で諸侯間の同盟が禁じられたため、カトリック連盟も解散することとなりました。プラハ条約は、三十年戦争を終結させる一歩となり、また、領邦教会制度の確立によって、宗教が国家間の紛争の原因となる時代に終止符を打ちました。

カトリック連盟は、三十年戦争というヨーロッパ全体を巻き込んだ宗教戦争において、カトリック勢力の中心的な役割を果たしました。その興亡は、当時のヨーロッパの宗教的、政治的な対立を象徴するものであり、その歴史は現代においても重要な教訓を与えてくれます。

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