カナダにおける柔道

カナダにおける柔道の歴史と発展

カナダにおける柔道の歴史は、およそ一世紀に渡ります。その始まりから、国際的な活躍、そして社会への貢献まで、様々な側面からカナダ柔道の軌跡を辿ります。

草創期：体育道場の設立と苦難

カナダ初の柔道道場「体育道場」は、1924年に佐々木繁孝（シゲタカ“スティーブ”ササキ）によってバンクーバーに設立されました。佐々木と彼の門下生たちは、ブリティッシュ・コロンビア州に複数の支部を開設し、柔道普及の礎を築きました。しかし、第二次世界大戦中、日系カナダ人に対する政府の厳しい措置により、1940年に全ての道場が閉鎖され、関係者は収容所へ送られるという苦難を経験しました。

戦後、政府は戦争捕虜の移住を奨励し、佐々木の門下生たちはカナダ全土に道場を再建し、柔道の灯を再び灯しました。

組織の確立と国際舞台への進出

1956年には、カナダ講道館黒帯協会が組織され、1958年に国際柔道連盟に承認されました。この組織は、現在のジュードー・カナダとして知られ、10州3準州の柔道協会を統括する競技団体として機能しています。現在、カナダ国内には約400のクラブが存在し、約3万人の人々が柔道の稽古に励んでいます。

カナダは、1964年の東京オリンピックで柔道が正式種目となって以来、オリンピックや世界選手権などの国際大会で数々のメダルを獲得しています。

オリンピックでのメダル獲得

1964年東京オリンピック: ダグ・ロジャースが80kg超級で銀メダル
1984年ロサンゼルスオリンピック: マーク・バージャーが95kg超級で銅メダル
1992年バルセロナオリンピック: ニコラス・ギルが86kg級で銅メダル
2000年シドニーオリンピック: ニコラス・ギルが100kg級で銀メダル
2012年ロンドンオリンピック: アントワーヌ・ヴァロア＝フォルティエが81kg以下級で銅メダル

世界柔道選手権大会でのメダル獲得

1965年: ダグ・ロジャースが80kg超級で銅メダル
1981年: フィル・タカハシが60kg以下級で銅メダル、ケビン・ドハティが78kg以下級で銅メダル
1993年: ニコラス・ギルが86kg級で銀メダル
1995年: ニコラス・ギルが86kg級で銅メダル
1999年: ニコラス・ギルが100kg級で銅メダル

パンアメリカン柔道選手権大会では、1967年から現在までに金メダルを含む76個のメダルを獲得しており、カナダ柔道が国際舞台で目覚ましい成果を収めていることがわかります。

視覚障碍者柔道の発展

カナダは、視覚障碍者のための国際柔道大会にも選手を輩出しています。パラリンピックでは、エディ・モーテン、ピエール・モーテン兄弟が複数回にわたり銅メダルを獲得しています。ウィリアム・モーガンは、IBSA世界選手権大会で銅メダルを獲得し、パラリンピックにも出場しました。ブラントフォード・ジュードー・クラブのトム・トンプソンは、パラリンピックで柔道カナダ代表チームを指導しています。

社会への貢献と顕彰

柔道を通じて社会に貢献した人物として、ジェイムズ・ドリスコル、ユズル・コジマ、ヨシオ・センダの3名がカナダ勲章を受章しています。また、ダグ・ロジャース、フランク・ハタシタ、ヨシオ・センダ、佐々木繁孝の4名がカナダ・オリンピックの殿堂入りを果たしています。さらに、マサオ・タカハシとユズル・コジマは、長年の柔道普及活動により日系カナダ人の社会的地位向上に貢献したとして、日本政府から瑞宝小綬章を授与されています。

大衆文化の中の柔道

1956年には、CBCの情報番組で柔道が紹介され、フランク・ハタシタとその娘による演武が披露されました。また、ダグ・ロジャースをテーマにしたドキュメンタリー映画「柔道家」も製作されました。

著名な柔道家：ピエール・エリオット・トルドー

カナダの元首相ピエール・エリオット・トルドーも柔道家として知られています。30代で柔道を始め、一級を取得。首相として日本を訪問した際には、講道館から初段を認められました。退任前には、マサオ・タカハシから二段を授与されています。

カナダ柔道は、草創期の苦難を乗り越え、国際的な成功を収め、社会への貢献も果たしてきました。これからも、多くの人々に愛され、発展していくことが期待されます。

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