カナマイシン

カナマイシン（Kanamycin）

カナマイシンは、アミノグリコシド系に分類される抗生物質であり、1957年に日本の梅澤濱夫によってストレプトマイセス・カナマイセティカスから初めて発見されました。この薬剤は、日本で最初の抗生物質としてその歴史に名を刻み、主に細菌感染症の治療に利用されています。カナマイシンは、白色の粉末状で水に溶けやすく、有機溶媒には溶けにくい特性を持ちます。特に、じっくりと微生物による生合成で製造され、硫酸塩製剤として経口投与や筋肉注射によって使用されます。

効能と効果

カプセル、シロップ、ドライシロップ形式で使用されるカナマイシンは、主に大腸菌、赤痢菌、腸炎ビブリオなどの病原菌に対して効果的であり、感染性腸炎の治療に利用されます。また、注射液としては、ブドウ球菌、肺炎球菌、淋菌、結核菌、大腸菌など様々な菌に対抗でき、皮膚の深在性・表在性感染症、リンパ管炎、熱傷や手術創の二次感染、さらに肺炎や膀胱炎など多数の疾患においても有効です。危険な細菌に対する抗菌作用があり、その特性からWHOの必須医薬品リストにも掲載されています。

対象となる細菌

カナマイシンの抗菌力は、特にグラム陰性菌に対して強い影響を及ぼします。大腸菌（Escherichia coli）や、クレブシエラ（Klebsiella pneumoniae）など、多くの細菌に対して効果を発揮します。具体的には、大腸菌に比べプロテウス属やセラチア属においても抗菌活性が認められています。

副作用と禁忌

カナマイシンの使用は一部の患者にとって禁忌となります。例えば、製剤成分やアミノグリコシド系抗生物質に過敏症のある患者や、家族にアミノグリコシド系の抗生物質による聴覚障害のある方は、使用を控える必要があります。重大な副作用の中には、第8脳神経に影響を及ぼす障害（耳鳴りや難聴など）や、まれに発生する重篤な腎障害が含まれます。このため、使用の際は慎重な判断が求められます。

作用機序

カナマイシンは、原核生物のリボソームの30Sサブユニットに結合することによって、その翻訳過程を阻害します。これにより、細菌内での蛋白質合成が妨げられ、結果として細菌の成長を抑制します。このメカニズムは、特に細菌に対して効果的ですが、真菌には影響を与えないため、抗真菌薬とは区別されます。

生合成と研究での応用

カナマイシンは、ストレプトマイセス・カナマイセティカスにより生産されるもので、複数の派生物としてカナマイシンBやCが存在します。この場合、合成経路は一連の複雑な化学反応を経て、最終的にカナマイシンAが生成されます。分子生物学の研究分野では、カナマイシン耐性遺伝子が細菌の選択マーカーとして広く利用され、特に大腸菌において遺伝子の転送や増殖に活用されています。このように、カナマイシンは医療分野だけでなく、研究においても重要な役割を果たしています。

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