赤痢菌

赤痢菌（Shigella）についての詳細

赤痢菌とは、グラム陰性の通性嫌気性桿菌で、腸内細菌科に属する微生物です。この細菌は主に人間やサルの腸内に感染し、主な感染経路は汚染された食べ物や水によるものです。赤痢菌に感染すると、細菌性赤痢を引き起こし、内臓に炎症を起こすことがあります。1898年に日本の細菌学者、志賀潔によって発見され、彼の名にちなんで「Shigella」という学名が付けられたことでも知られています。

細菌学的特徴

赤痢菌は、通常0.5×1-3µmの大きさの棒状をしており、鞭毛を持たないため運動性がありません。大腸菌やサルモネラと非常に近い関係にあるため、これらの細菌と生化学的に差別化されてきたものの、最近の研究では遺伝子レベルで同種と見なされることもあるほどです。赤痢菌はまた、酸に対する耐性が高く、少数の菌でも感染を引き起こすことができる特性を持っています。

赤痢菌の細胞内寄生

この菌は感染した宿主の細胞内で増殖し、腸管上皮細胞に侵入する能力を持っています。赤痢菌はIII型分泌装置という特殊な構造を用いて、宿主細胞にエフェクター分子を注入し、細胞骨格を再構成することで腸管上皮細胞内に侵入します。この過程では、赤痢菌が持つアクチンを利用して細胞内部で移動し、周囲の細胞にも広がっていきます。

下痢、発熱、そしてしぶり腹を伴う膿粘血便が主な症状で、これらは赤痢菌が上皮組織に与える損傷や、感染によって引き起こされる炎症反応によります。潜伏期間は通常1〜5日で、その後の症状は1週間ほどで軽快することが多いです。

分類と病原性

赤痢菌には大きくA〜Dの4つの亜群が存在し、各亜群によって異なる病原性があります。

• - A亜群（S. dysenteriae）：最も毒性が強く、志賀毒素を産生する。
• - B亜群（S. flexneri）：次に毒性が高い。
• - C亜群（S. boydii）：中程度の毒性。
• - D亜群（S. sonnei）：毒性が最も弱い。

感染経路と治療法

赤痢菌は、主に汚染された食物や水を介して感染しますが、感染者の排泄物を扱った後の手指を介した感染もあります。また、ハエによる媒介も注意が必要です。赤痢菌に対する有効なワクチンは開発されていないため、個々の衛生管理が重要です。

日本では、赤痢は感染症法における三類感染症に指定されており、過去には児童に対して特に危険な感染症として認識されていました。治療には抗生物質が使用されますが、薬剤耐性を持つ菌も多く、選択が難しい場合があります。

志賀毒素

A亜群に由来する志賀毒素は、腸管出血性大腸菌のベロ毒素と構造が類似しており、宿主細胞内に取り込まれることで細胞の正常機能を阻害します。この毒素は特に小児において溶血性尿毒症症候群（HUS）を引き起こすことがあります。

結論

赤痢菌は感染症の一種として、特に衛生条件が整っていない地域では依然として問題であります。教育や予防策によって感染のリスクを低減し、細菌に対する理解を深めることが大切です。

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