カナムグラ

カナムグラ（Humulus japonicus）についての詳細

概要

カナムグラはアサ科に属する一年草で、和名は鉄葎（てつつら）です。この名称は、その強靭な蔓が鉄に例えられ、絡み合った様子が草の繁茂を表しています。この植物は簡単には切断や引き剥がしができず、その生育力は非常に旺盛です。また、カナムグラには多くの類似品種が存在しますが、系統的にはアカネ科に属するものも多く、本種とは異なります。漢名では律草（りつそう）と呼ばれています。

生息分布

カナムグラは中国大陸や台湾に加え、日本国内では北海道から九州まで広がっています。日当たりの良い原野や道端、荒れ地などに自生し、特に畜産や農業、家庭排水の影響で富栄養化した土壌で繁殖しやすい傾向があります。このため、優占種の一つとして知られています。しかし、この植物はアメリカでは園芸用に栽培された後、野生化して外来雑草となっています。

形態的特徴

カナムグラは雌雄異株で、一年草のつる植物です。普通、非常に広がりを見せ、他の物体に絡まりがちです。茎から葉柄にかけて下向きの小さな棘が見られる点も特徴的です。葉は長い葉柄で対生し、長さ5〜12センチメートルほどで、5〜7裂に分かれた掌状の形状をしています。葉縁には鋸歯が多く、表面は荒い毛で覆われており、ざらついた感触を持ちます。

花期は晩夏から秋にかけて（8月〜10月）の間に訪れ、雄株では分枝した花茎が延び、円錐花序に淡緑色の雄花がまばらに咲きます。雌株の花は葉腋から花茎を伸ばして下向きに咲き、苞に包まれた紫褐色の花を形成します。雌花の苞は先端が尖っており、濃紫色の模様が見られます。受粉後、雌花は成熟し、赤紫色の果実へと変化します。

アレルギーの関与

カナムグラの花粉は、特に秋の花粉症の要因として知られており、ブタクサやヨモギなどと共にアレルギーの一因となります。

医療利用

この植物の茎や葉、さらには花は、薬草としても利用される部分です。主に健胃や利尿に効果があり、夏に茎や葉を切って干し、乾燥させたものが使用されます。具体的な利用法としては、律草を1日量5〜10グラム、水400ccでとろ火にかけて煎じ、3回に分けて服用する方法が知られています。また、花穂も健胃効果を目的に用いられており、1日量5〜8グラムを水400ccで煎じる利用法もあります。

類似種とその他の情報

カナムグラに似た植物としては、セイヨウカラハナソウ（Humulus lupulus）などが挙げられますが、これとは異なる性質を持っています。さらに、万葉集の「やえむぐら」は今のところ、このカナムグラを指していると考えられます。また、カナムグラは、キタテハの食草としても知られています。

カナムグラはその生育力や形態の特異性から注目される存在です。場合によっては利用価値の高い植物でありつつも、アレルギーの原因になるため注意が必要です。

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