カニ囲い

カニ囲い：将棋における堅実かつ攻撃的な囲い

カニ囲いは、将棋において古くから用いられてきた囲いのひとつです。その特徴は、堅牢性と攻撃性の両立にあります。特に、二枚落ちの定跡として知られており、近年でもプロ棋士によって活用されています。

カニ囲いの特徴と成り立ち

カニ囲いは、一般的に「▲7八金・▲6八銀・▲5八金・▲6九玉」という形で構成されます。その形状がカニを連想させることから、この名が付けられました。江戸時代の将棋文献にも登場しており、長い歴史を持つ戦法です。

その最大の特徴は、上部からの攻撃に強いことです。二枚落ちにおいては、上手が上部からの攻めを仕掛けてくることが多いですが、カニ囲いはこの攻撃に対して高い防御力を発揮します。そのため、二枚落ちにおいて下手が有利に戦うための重要な戦法として用いられてきました。

カニ囲いの戦い方と応用

カニ囲いは、その堅牢さから、居飛車急戦との相性も抜群です。角交換をしない棒銀戦法においても、カニ囲いは有効な選択肢となります。また、後手番においては、矢倉囲いの準備段階としてカニ囲いを用いることも一般的です。そのため「カニ囲いは矢倉の子供」と言われることもあります。

さらに、カニ囲いは矢倉崩し戦法とも相性が良く、矢倉を組むふりをして急戦に持ち込む戦略にも利用できます。米長流急戦矢倉や英春流右四間飛車など、多くの戦法においてカニ囲いが用いられており、その応用性の高さが伺えます。米長流においては、▲6八銀を攻めに使うことで矢倉を攻略することもあります。

カニ囲いの弱点と対策

カニ囲いの最大の弱点は、横からの攻撃、特に飛車の打ち込みです。しかし、玉を7九に移動させることで、この弱点はある程度カバーできます。また、矢倉に似た形に変化させることで、より堅牢な囲いに進化させることも可能です。

二歩突っ切り戦法とカニ囲い

二枚落ちにおいて、下手が4筋と3筋の歩を積極的に突いていく「二歩突っ切り戦法」があります。この戦法では、下手の玉の囲いとしてカニ囲いが頻繁に用いられます。これは、二歩突っ切り戦法の攻撃的な展開と、カニ囲いの防御力を組み合わせることで、上手に対して大きなプレッシャーを与えるためです。

例えば、初手から△6二銀、▲7六歩、△5四歩、▲4六歩、△5三銀、▲4五歩、△6二金、▲3六歩、△3二金、▲3五歩と進めていきます。この展開において、下手がカニ囲いを構築することで、上手の攻撃を凌ぎながら反撃の機会を伺うことができます。

図1、図2のような具体的な指し手例から、カニ囲いの強さと二歩突っ切り戦法とのシナジー効果を理解できます。 ▲7六歩という指し手は、上手から7六歩と垂れ歩を打たれるのを防ぐ意味合いを持っています。

まとめ

カニ囲いは、その堅実さと攻撃性を兼ね備えた、奥深い戦法です。初心者から上級者まで、様々な棋力層で活用できるため、将棋を学ぶ上で非常に重要な囲いのひとつと言えるでしょう。その歴史、戦い方、弱点などを理解することで、より深く将棋の世界を楽しむことができるはずです。

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