カノプス壺

カノプス壺（カノプスつぼ、canopic jar）は、古代エジプトにおいてミイラを作成する際に用いられた、臓器を収めるための容器です。一般的には「カノプス壺」と呼ばれますが、「カノポス壺」や「カノープス壺」、「カノポス容器」といった表記も見られます。

カノプス壺の用途

古代エジプト人は、人が亡くなると魂が肉体を離れると考えましたが、その魂が再び肉体に戻るためには、肉体を保存する必要があると考えました。そのため、ミイラを作る際に、心臓を除く重要な臓器を体から取り出し、カノプス壺に保管しました。心臓は、魂が宿ると考えられていたため、体内に残されました。この行為は、来世での復活を願うための重要な儀式でした。

カノプス壺の構造と装飾

カノプス壺は、通常、蓋と本体から構成され、蓋には神々の頭部を模した装飾が施されています。特に有名なのは、ホルスの4人の息子を象ったものです。彼らはそれぞれ異なる臓器を守護するとされており、以下の通りです。

イムセティ: 人間の姿で表され、肝臓を守護します。
ハピ: ヒヒの姿で表され、肺を守護します。
ドゥアムトエフ: 山犬の姿で表され、胃を守護します。
ケベフセヌエフ: 隼の姿で表され、腸を守護します。

これらの神々の像は、それぞれの壺に収められた臓器を安全に守護すると信じられていました。カノプス壺自体も、オシリス神の像やその他の装飾が施されている場合があります。

カノプス壺の名称の由来

「カノプス」という名前は、ギリシア神話に登場するメネラオス王の水先案内人、カノプスに由来します。神話によると、カノプスはトロイアからの帰還途中に事故で死亡し、エジプトのギルダ海岸に埋葬されたとされています。その地にはカノプスの名にちなんだ町が建設されました。現在のエジプトのアブキールにあたります。この町では、オシリス神の像が壺の形で崇拝されており、ミイラ用の臓器収蔵器の形状と似ていることから、19世紀になってこの名称が付けられました。

その他の関連情報

カノプス壺は、古代エジプトの宗教観や死生観を理解する上で重要な遺物です。ミイラ作成の過程や、来世への信仰といった、古代エジプトの文化を物語る上で欠かせない要素の一つと言えるでしょう。


関連項目

ミイラ
オシリス
エジプト
サルコファガス
ホルスの4人の息子
カノープス

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