カバートコート

カバートコート（Covert coat）

カバートコートは、紳士用の外套で、通常はノッチ付きのラペルが特徴的です。このコートは19世紀後半に成立し、狩猟や乗馬に適した「ショート・トップコート」として使用されていました。20世紀に入ると、カバートコートの位置付けは変わり、フロックコートやモーニングコートといった伝統的な礼服に対して、よりカジュアルで日常的に着用できる外套としての役割を持つようになりました。

デザインの特徴

カバートコートの生地はカバートクロスと呼ばれ、狩猟が行われる自然豊かな地域に由来して名付けられた厚手のツイードです。デザインにおいては、常にシングルブレストであり、ノッチドラペル、センターベント、フラップポケットなどの特徴があります。袖口や裾には通常4本（時折5本）のステッチが施されており、洗練された印象を与えています。また、襟は同じ生地のカバートクロスやベルベットで作られていることがあります。

色合いとしては、淡い緑がかった褐色からダークブラウン、緑色がかったタンニンまで多様ですが、グレーやネイビーといった選択肢も一般的です。これらは狩猟に適した地味な色彩が選ばれることが多く、自然環境に溶け込むデザインを意識しています。

著名な着用者

カバートコートは歴史上、多くの著名人に支持されてきました。特に、イギリス国王ジョージ6世やエドワード8世が好んで着用していたことで知られています。さらに、2000年に公開された犯罪コメディ映画『スナッチ』では、ジェイソン・ステイサムとスティーヴン・グレアムがこのコートを纏い、その印象を残しました。

近年では、2015年に行われたイギリス総選挙の際に、ナイジェル・ファラージがカバートコートを着用し、メディアの注目を集めました。彼はイギリス独立党（UKIP）の党首を務め、その後ブレグジット党の代表となった政治家です。

結論

カバートコートはその独自のスタイルと歴史的な背景から、紳士たちにとって特別な一着であり続けています。狩猟や乗馬などのアウトドア活動に始まり、今ではカジュアルなファッションとしても広く受け入れられています。伝統と現代のエッセンスが融合したカバートコートは、紳士のワードローブに欠かせないアイテムと言えるでしょう。

もう一度検索