カファナ

カファナとは

カファナ（Kafana）は、セルビア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、クロアチア、マケドニアなど、旧ユーゴスラビア地域にみられる大衆食堂の呼称です。
主に、酒やコーヒー、軽食（メゼ）などが提供され、多くの店ではバンドによる生演奏が行われます。
男性が集まり、酒やコーヒーを片手に談笑する社交場としての役割も担っています。

カファナの語源と歴史

カファナのルーツは、オスマン帝国がバルカン半島を支配した時代に遡ります。
オスマン帝国から伝わったコーヒーを飲む習慣が、人々の交流の場を生み出し、次第にカファナへと発展しました。

カファナの語源は、トルコ語の「kahvehane（コーヒーハウス）」であり、さらに遡るとペルシア語の「qahveh-khaneh」に由来します。
これは、アラビア語の「qahve（コーヒー）」とペルシア語の「khane（家）」が組み合わさった言葉です。

18世紀から19世紀にかけて、カファナは家族経営の店として、代々受け継がれていきました。
都市部の発展とともに、料理を提供するカファナが現れ、「街のカファナ」として賑わうようになります。

20世紀に入ると、音楽演奏がカファナの新たなサービスとして導入され、地元バンドによる演奏が人気を集めました。
第二次世界大戦後には、農村部から都市部への人口流入に伴い、カファナの形態も多様化しました。

カファナの衰退とステレオタイプ

20世紀後半になると、「カファナ」という言葉は、時代遅れで薄汚いイメージを帯びるようになります。
これは、流行歌の影響や、映画におけるカファナの描写などが影響していると考えられています。

視覚的ステレオタイプ

映画などで描かれるカファナの典型的なイメージは、以下のようなものです。

チェック柄のテーブルクロスがかけられた四角いテーブル
タバコの煙で黄ばんだ天井
羽目板の壁
巨乳で小太りのウェイトレス
ヌードカレンダー

社会的ステレオタイプ

カファナは、以下のようなイメージを持たれることもあります。

悲しい恋を癒す場所
博徒や裏社会の人間が集まる場所
男性の社交場

地域ごとのカファナ

地域によって、カファナの形態や特徴は異なります。

ボスニア・ヘルツェゴビナ

ボスニア・ヘルツェゴビナには、トルコに近い伝統的なカファナが残っています。
これらの店では、コーヒーと酒類のみを提供し、食事は別の専門店で摂るのが一般的です。

セルビア

セルビアでは、料理を提供するカファナが多く、レストランに近い形態の店も存在します。
しかし、若者の間ではカファナという言葉は古臭いイメージがあるため、新しい店ではカファナという名前を避ける傾向があります。

クロアチア

クロアチアでは、コーヒーを「kava」と呼ぶため、カファナは「kavana」と呼ばれます。

マケドニア

マケドニアには、5千を超えるカフェアナが存在します。
首都スコピエには、特に多くのカフェアナが集まっています。

カファナは、旧ユーゴスラビア地域の人々にとって、単なる飲食店以上の意味を持つ、特別な場所なのです。

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