メゼ

メゼ（Meze）とは

メゼ、またはメッゼは、東地中海地域、具体的には南東ヨーロッパ、カフカス、中東、北アフリカで広く親しまれているアペタイザー、または軽食の一種です。アラック、ウーゾ、ラクといったアニスで風味付けされたリキュールや、様々なワインと共に楽しまれるのが一般的で、スペインのタパスやおつまみに似た存在と言えるでしょう。

その語源はペルシア語に由来し、「味わう」を意味する「マジーダン (mazīdan)」から派生した「味」または「軽食」を意味する「マゼ (maze)」であるとされています。

レバノン料理をはじめとするアラブ料理や、アルメニア、グルジアといったカフカス地域では、メゼはコース料理の一部として、アペタイザーとして提供されます。アルコール類と共に提供されない場合、アラブ世界では「ムカッビラート (muqabbilat)」、つまり「前菜」と呼ばれます。

各国におけるメゼの種類

メゼは、その地域や文化によって様々なバリエーションが存在します。

トルコ

トルコでは、メゼは主にラク（アニス風味の食前酒）と共に、「メイハネ (Meyhane)」と呼ばれる料理店で供されます。代表的なメゼには、以下のようなものがあります。

ベヤズ・ペイニル (beyaz peynir): フェタチーズに似た白いチーズ
カヴン (kavun): メロンの薄切り
アジュル・エズメ (acılı ezme): クルミ入りトウガラシペースト
ハイダリ (haydari): レバントのラブネに似た濃い水切りヨーグルト
パトゥルジャン・サラタス (patlıcan salatası): 冷たいナスのペースト状のサラダ
カラマル (kalamar): イカリング
エンギナル (enginar): アーティチョークの料理
ジャジュク (cacık): ザジキに似たキュウリとニンニクのヨーグルト和え
ピラキ (pilaki): 豆や野菜をオリーブオイルで炒め煮にした料理
ドルマ/サルマ (sarma): ブドウの葉やピーマンなどの野菜に肉や米を詰めた料理
キョフテ (köfte): ミートボール

ギリシャとキプロス

ギリシャとキプロスでは、メゼ、メゼス、あるいはメゼデスと呼ばれ、冷製または温製の、辛味、酸味、塩味の効いた軽食や、主菜を少量ずつ盛り合わせたものを指します。十数種類の異なる料理が、複数の小皿や大皿に少しずつ盛り付けられて提供されます。

メゼには、「小さな魚」やグリルしたタコのような魚介類料理、小皿に盛られたサラダ、カラマタ産オリーブ、煮たエンドウマメ、揚げた野菜、メリザノサラタ（ナスのペースト状のサラダ）、タラモサラタ（カラスミやタラコをパンやマッシュポテト、レモン果汁、酢、オリーブオイルと混ぜた料理）、ナッツとドライフルーツ、サガナキと呼ばれる焼きチーズ、そして様々なギリシャの羊、山羊、または牛のチーズ（フェタ、カセリ、ケファロティリ、グラヴィエラ、マヌリ、メツォヴォーネ、ミジトラ等）が供されます。

その他の小皿料理には、ベクリメゼ（肉のシチュー）、ケフテデスやスズカーキャのようなミートボールがあります。メゼは「メゼドプリオン (mezedopoulion)」と呼ばれるレストランで飲み物と共に供される他、ウーゾやチプロ (Tsipouro) のような飲料を供するチプラディコやウゼリと呼ばれるカフェでも供されます。タベルナやエスティアトリオといったレストランもまたメゼをオレクティコ（orektiko、前菜）として供します。ちょっとした集まりでも通常、ホストは客にメゼを振る舞います。クラソメゼデス（Krasomezethes、ワインのメゼ）はワインに適するメゼであり、ウーゾメゼデス（Ouzomezethes）はウーゾに合うメゼです。

レバノンとキプロス

レバノンとキプロスでは、メゼは食事として扱われることもあります。菜食メゼの他、肉や魚を使ったメゼも存在します。食卓には一度に4〜5皿が出され、通常5〜10種類の組み合わせがあります。料理には決まった順序があり、オリーブ、タヒーニ（ゴマペースト）、サラダ、ヨーグルトの後に野菜と鶏卵料理が続き、次に肉料理と魚料理の小皿が特別な付け合わせと共に出され、最後に魚を丸ごと用いた料理や肉のシチューやグリルが主菜として供されます。

セルビア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、アルバニア

セルビアでは、メゼにはチーズ、カイマック（凝固したスイギュウのクリーム）、サラミ、燻製ハム、クーレン（風味付けソーセージ）、様々な種類のパンがあります。ボスニア・ヘルツェゴビナでは、メゼには通常、固いチーズやクリーミーなチーズ、カイマックまたはパヴラカ（スメタナ）、スホ・メソ（乾燥させた塩味の燻製牛肉）、ピクルス、スジュック/スジュク（乾燥した辛いソーセージ）があります。

アルバニア式のメゼの大皿には通常、プロシュット、サラミ、フェタに似た塩水漬けチーズ、オリーブオイルとニンニクでマリネした焼いたピーマンや緑オリーブを添えて供されます。

北アフリカ

北アフリカのピエ・ノワールの食文化では、メゼに似たケミア（kémia）という前菜をとる習慣があります。

その他のメゼ

キプロス、イスラエル、レバノン、パレスチナ地域、シリアで一般的なメゼには、以下のようなものがあります。

ババガヌーシュ/ムタッバル: 焼いてすりつぶしたナスにタヒーニやニンニクなどを混ぜた料理
フムス: 調理してすりつぶしたヒヨコマメのディップまたはスプレッド
フムス・ビッラハム: 肉入りフムス
キッベ: ブルグール、挽き肉、香辛料を合わせて作った料理
キッベ・ナッイェ: ブルグール、生の子羊挽き肉、香辛料を混ぜ合わせた料理
マカニク/スジュク: 香辛料で味付けした子羊肉と牛肉のソーセージ
ザハラ・メクレーヤ/カルナビート・メクリー: 揚げカリフラワー
若鶏の丸焼き
ラバン: ヨーグルト
ラブネ: 水切りヨーグルト
シャンクリーシュ: 牛や羊の乳のチーズ
ムハンマラ: 挽いたクルミ、パン粉、ニンニク、塩、レモン果汁、オリーブオイルを混ぜた唐辛子のディップ
パストゥルマ: 味付けして乾燥した牛肉
タッブーレ/タッブーリ: ブルグールとパセリ、ミント、トマト、青ネギの微塵切り、レモン果汁、オリーブオイルなどから成るサラダ
ファットゥーシュ: 自家製野菜と焼いたピタを切ったものを混ぜたサラダ
サラタ・ジャルジール: ルッコラサラダ
アーティチョークサラダ

ブルガリアで一般的なメゼには、以下のようなものがあります。

ルカンカ: 香辛料入りソーセージ
スジュック/スジュク: 乾燥した辛いソーセージ
シレネ料理: フェタに似た白い塩水漬けチーズ
ショプスカ・サラタ: トマト、キュウリ、タマネギ、焼いた唐辛子、シレネのサラダ

メゼは、その多様な種類と地域性から、それぞれの文化を反映した食文化の重要な一部と言えるでしょう。

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