カプレーティとモンテッキ

『カプレーティとモンテッキ』（I Capuleti e i Montecchi）は、ヴィンチェンツォ・ベッリーニが作曲した2幕からなるオペラで、「トラジェーディア・リーリカ」という副題が付けられています。1830年にヴェネツィアで初演され、フェリーチェ・ロマーニが台本を手がけました。

創作と初演の経緯

作曲のきっかけ

ベッリーニは、1826年にナポリでオペラ『ビアンカとフェルナンド』を初演し、その独創性がミラノ・スカラ座に認められました。その後、『海賊』、『ビアンカとジェルナンド』（改訂版）、『異国の女』とキャリアを重ねていきました。しかし、1829年にパルマで初演された『ザイーラ』は失敗に終わります。その後、ヴェネツィアのフェニーチェ劇場から『海賊』の上演と新作の依頼を受けました。1829年12月からヴェネツィアに滞在し、『海賊』の初演を監修、好評を博しました。劇場側から別の作曲家の代役として新作を依頼され、ベッリーニは1830年1月から作曲に着手します。彼は友人への手紙で「これで病気にならなかったら奇跡」と書くほど仕事に打ち込みました。作品には、音楽院時代の作品『アデルソンとサルヴィーニ』や『ザイーラ』からの旋律が転用されました。

台本とその原典

フェリーチェ・ロマーニは、1825年にニコラ・ヴァッカイのオペラのために書いた台本『ジュリエッタとロメオ』を改訂して使用しました。これはルイージ・シェヴォーラの戯曲を基にしていますが、伝承やルイージ・ダ・ポルトの『ジュリエッタ』なども参考にされています。

初演

1830年3月11日、ヴェネツィア・フェニーチェ劇場で初演が行われました。ロメオ役はジュディッタ・グリージ、ジュリエッタ役はマリア・カラドーリ＝アラン、テバルド役はロレンツォ・ボンフィーリ、ロレンツォ役はラニエーリ・ポッキーニ・カヴァリエーリが担当しました。ベッリーニは「これ以上の優れた歌、演技は想像できない」と賞賛し、その後11日間で8回上演されました。

女性歌手が歌うロメオ

ベッリーニは、ロメオ役をフェニーチェ劇場所属のメゾソプラノ歌手ジュディッタ・グリージに歌わせるために作曲しました。これは、劇場の男性歌手陣の力量不足とグリージの男性的容姿が理由とされています。また、ロレンツォ役は当初バス歌手のために書かれていましたが、作曲途中でテノールの声域に変更されました。初演ではテノール歌手のカヴァリエーリが担当しましたが、出版譜やその後の公演ではバス歌手が担当することが多いです。

その後の改訂

1830年12月のミラノ・スカラ座での公演では、メゾソプラノのアマーリア・シュッツ・オルドージの声域に合わせてジュリエッタ役の声域が下げられました。1832年のボローニャでの上演では、マリア・マリブランの意向により終幕の場面が変更され、1833年のパリ、ロンドンでの上演でも踏襲されましたが、1834年のフィレンツェでの上演でオリジナルに戻されました。1966年には、指揮者クラウディオ・アバドがロメオをテノールの声域に移した版を作成し、ジャコモ・アラガルが歌ってミラノ・スカラ座で上演されました。

登場人物とあらすじ

登場人物

ロメオ：モンテッキ家の当主。ジュリエッタと恋仲。
ジュリエッタ：カプレーティ家の令嬢。ロメオと恋仲。
テバルド：カペッリオの甥。ジュリエッタの婚約者。
カペッリオ：カプレーティ家の当主。ジュリエッタの父。
* ロレンツォ：カプレーティ家のお抱え医師。

あらすじ

13世紀のヴェローナを舞台に、教皇派のカプレーティ家と皇帝派のモンテッキ家が長年抗争を繰り広げています。ロメオとジュリエッタは互いに惹かれあいますが、家同士の争いに翻弄され、悲劇的な結末を迎えます。

第1幕

カプレーティ家では、ロメオへの復讐を誓っています。当主カペッリオの甥であるテバルドは、ロメオが和睦を持ちかけてきても拒否すべきだと主張します。カペッリオは、テバルドとジュリエッタの結婚式を挙げようとします。そこへロメオが現れ、ジュリエッタとの結婚を申し込むものの、カペッリオは拒否します。ジュリエッタは、ロメオを想いながら嘆き悲しんでいます。ロメオはジュリエッタに駆け落ちを持ちかけますが、彼女は決心できません。婚礼の始まる時刻が迫り、ロメオは去って行きます。

第2幕

ロレンツォはジュリエッタに、仮死状態になる薬を飲むことを提案します。ジュリエッタは意を決し、薬を飲み干します。カペッリオは、ジュリエッタが遠まわしに別れの言葉を口にするので、不安を覚えます。ロメオはテバルドと決闘を始めようとしますが、ジュリエッタの死を悼む声が聞こえ、悲嘆します。ジュリエッタの墓の前で悲嘆に暮れるロメオは、毒をあおり、ジュリエッタの後を追います。やがてジュリエッタが仮死状態から目覚めますが、ロメオはすでに手遅れでした。ジュリエッタは絶望に力尽きて死に、両家の争いの悲劇を象徴する形で幕を閉じます。

もう一度検索