フェニーチェ劇場

フェニーチェ劇場：不死鳥の如きヴェネツィアの歌劇場

フェニーチェ劇場（Teatro La Fenice）は、イタリア・ヴェネツィアにある歴史的な歌劇場です。その名はイタリア語で「不死鳥」を意味し、幾度かの火災に見舞われながらも再建を遂げてきた劇場の歴史を象徴しています。日本語では「ラ・フェニーチェ」とも呼ばれ、世界中のオペラファンに親しまれています。

劇場の由来と歴史

フェニーチェ劇場は、1773年に火災で焼失したサン・ベネデット劇場の後継として建設されました。1792年の開場以来、ロッシーニ、ベッリーニ、ドニゼッティ、ヴェルディなど、数々の著名な作曲家のオペラが初演され、ヨーロッパにおけるオペラ文化の中心地としての地位を確立しました。

しかし、その歴史は決して平坦ではありませんでした。1836年と1996年の二度にわたる火災で劇場は全焼。特に1996年の火災は、修復工事中の電気工事業者による放火という前代未聞の事態でした。しかし、その度にヴェネツィアの人々は不屈の精神で劇場を再建し、その名を「不死鳥」にふさわしいものとしています。

ヴェネツィアとオペラの歴史

ヴェネツィアとオペラの関係は深く、17世紀にはすでに16もの歌劇場が競合していました。サン・モイゼ劇場やサン・サルヴァトーレ劇場（現ゴルドーニ劇場）、サン・ジョヴァンニ・グリソストモ劇場など、数々の劇場がヴェネツィアのオペラ文化を支えてきました。特にサン・ジョヴァンニ・グリソストモ劇場は、入場料を払えば身分に関係なく誰でもオペラを鑑賞できる最初の劇場として知られています。

フェニーチェ劇場の創建

フェニーチェ劇場の建設は、サン・ベネデット劇場の焼失後、新たな劇場を求めるヴェネツィアの人々の熱意によって始まりました。建築設計競技には多くの建築家が参加し、最終的にジャンアントニオ・セルヴァの案が採用されました。客席数約1500席の新劇場は、1792年5月16日にパイジエッロのオペラ『I giuochi d'Agrigento』で華々しく開場しました。

二度の火災と再建

1836年12月13日、劇場は再び火災に見舞われ全焼。しかし、わずか1年で再建され、1837年12月26日に再建初演を迎えました。その後も、1854年と20世紀に入ってから1936年に大改修が行われ、ヴェルディの傑作『リゴレット』や『椿姫』などが初演されました。

1996年1月29日、フェニーチェ劇場は再び火災で全焼。しかし、ヴェネツィアの人々は諦めませんでした。焼跡に残されたシャンデリアの再利用や、映画作品を参考にするなど、あらゆる手段を講じて劇場を復元。2003年12月14日、リッカルド・ムーティ指揮によるコンサート形式の演奏会で再開場を果たし、2004年11月にはヴェルディの『椿姫』でオペラ公演も再開されました。

フェニーチェ劇場で初演された主なオペラ

ロッシーニ：『タンクレーディ』、『シジスモンド』、『セミラーミデ』
マイアベーア：『エジプトの十字軍』
ベッリーニ：『カプレーティ家とモンテッキ家』、『テンダのベアトリーチェ』
ドニゼッティ：『ベリザーリオ』、『ルデンツ家のマリア』
ヴェルディ：『エルナーニ』、『アッティラ』、『リゴレット』、『椿姫』
ストラヴィンスキー：『放蕩者のなりゆき』
* ブリテン：『ねじの回転』

フェニーチェ劇場は、ヴェネツィアのオペラ文化を象徴するだけでなく、人々の不屈の精神と芸術への情熱を体現する存在です。その美しい内装と豊かな音響は、訪れる人々を魅了し続けています。

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