カプースチン・ヤール

カプースチン・ヤール：ソ連の秘密基地からロシアの宇宙開発拠点へ

カプースチン・ヤールは、ロシア南部のアストラハン州北西部に位置するロケット・ミサイル開発および打ち上げ基地です。ヴォルゴグラードとアストラハンの間に位置し、閉鎖都市ズナメンスクがその中心となっています。試験場の広さは650平方キロメートルに及び、ロシア領内だけでなく、カザフスタンの一部にも広がっています。

歴史

1946年、ソビエト連邦は第二次世界大戦で得たドイツの技術を基に、この地にロケット開発基地を建設しました。ヴァシーリー・ヴォズニューク砲兵大将の指揮のもと建設が進められ、1947年には最初のロケット打ち上げが行われました。このロケットは、ドイツのV2ロケットをコピーしたものでした。

その後、セルゲイ・コロリョフのチームが打ち上げ施設を建設し、多くのミサイルやロケットがここで試験されるようになりました。試験場は次第に発展し、1962年には閉鎖都市カプースチン・ヤール1が誕生しました。1966年以降は宇宙基地としての機能も持つようになり、宇宙船の打ち上げも行われるようになりました。

冷戦時代、カプースチン・ヤールは西側諸国にとって謎に包まれた場所でした。帰国したドイツ人科学者の証言や偵察機による偵察によって、その重要性が認識されるようになりました。しかし、秘密裏に実験が行われていたため、UFOの目撃情報も多く、「ロシアのロズウェル」と呼ばれることもありました。

核実験

1957年から1961年にかけて、カプースチン・ヤールでは高高度での大気圏内核実験が行われました。これは、核弾頭を搭載した対空ミサイルを打ち上げ、上空の標的を破壊するというものでした。その後、より大きな弾頭を積んだ弾道ミサイルを打ち上げ、カザフスタン上空で爆発させる実験も行われました。これらの核実験は、周辺地域に深刻な環境汚染と健康被害をもたらしました。

打ち上げ実績

カプースチン・ヤールでは、様々なミサイルやロケットの打ち上げが行われてきました。以下はその一部です。

A-4 (V-2)
R-1
R-11FM
R-5M
R-12
R-14 チュソヴァーヤ
RT-2PM トーポリ
S-400

発射場管理者

カプースチン・ヤールは、長年にわたり多くの管理者によって運営されてきました。主な管理者としては、以下の人物が挙げられます。

* ヴァシーリー・ヴォズニューク砲兵大将（1946-1973年）

現在の状況

カプースチン・ヤールは現在もロシアの重要なロケット・ミサイル開発基地であり、宇宙開発拠点としての役割も担っています。しかし、過去の核実験による環境汚染は依然として深刻であり、周辺住民への健康被害も懸念されています。

カプースチン・ヤールは、ソ連時代の秘密基地から現代の宇宙開発拠点へと変貌を遂げましたが、その歴史は負の遺産も抱えています。今後の持続可能な開発と環境保護が課題となっています。

もう一度検索