カミーユ・ショータン

カミーユ・ショータン：フランス第三共和政を彩った政治家

カミーユ・ショータン（1885年2月1日 - 1963年7月1日）は、フランス第三共和政期において、その名を轟かせた急進派の政治家です。彼は、三度にわたり閣僚評議会議長、すなわち首相の座を務め、フランス政治に大きな足跡を残しました。

若き日の歩みと政治家への道

著名な急進派政治家の血を受け継ぎ、若き日のショータンは法律家を目指し勉学に励む傍ら、アマチュアラグビー選手としても活躍しました。スタッド・フランセとも対戦したというエピソードは、彼の多才さを示すものです。1906年にはフリーメイソンの役職であるグラン・オリオン・ド・フランスに就任しましたが、1938年には政治的な理由から脱退しています。

政治家としては、議員であった叔父アルフォンス・ショータンの地元政党に参加し、急進社会主義政治家として典型的なキャリアを歩みました。1912年にはトゥールの町評議員に選出され、1919年から1925年まで町長を務めました。1919年から1934年までは下院議員、1934年から1940年までは上院議員として国政に携わりました。中道左派政党である急進社会党の中でも、ショータンは右派（反社会主義派、自由主義賛成派）の指導的な人物の一人と見なされていました。1924年から1926年の間には、エドゥアール・エリオ、ポール・パンルヴェ、アリスティード・ブリアンの下で、左派連合内閣のメンバーとして活動しました。

首相として、そして人民戦線内閣へ

政党間の調整能力に長けていたショータンは、中道左派による連立政権の樹立にしばしば貢献しました。1930年には首相に就任し、短命ながらも政権を率いました。1934年の選挙で左派が勝利すると、内務大臣を経て、1933年11月に再び首相として政権を担うことになります。しかし、スタヴィスキ事件が発生し、内閣閣僚の汚職が明るみに出ると、政権は極右からの激しい批判に晒されました。1934年1月27日、反政府的な出版物がスタヴィスキの死を政府による隠蔽工作だと断定したことを受け、ショータンは内閣総辞職を決断しました。

1936年には、レオン・ブルムを首班とする人民戦線内閣が発足し、ショータンは閣外大臣として急進社会党を代表しました。1937年6月から1938年3月にかけては、ブルムの後任として再び首相を務めました。当時、フランの価値は下落を続け、政府の財政状況は依然として厳しいままでした。彼は人民戦線の問題点を是正するため、国内の鉄道を国有化し、フランス国鉄への再編を進めました。1938年1月には、社会主義者を除外し、中道左派の共和主義者のみで新たな内閣を組織し、フランス共産党を閣外へと追いやりました。同年2月には、結婚した女性に対し経済的・法的な独立を認め（それまで妻は、家計に関する行動を夫に委任する必要がありました）、既婚女性の大学進学と銀行口座開設を許可しました。政府は第三共和制憲法213条（妻に対し夫への服従を求める条項）を廃止しましたが、夫が「世帯の住居を選ぶ権利」を持つ「家族の長」であるという記述は維持されました。しかし、政権は1938年3月10日に崩壊しました。

第二次世界大戦とショータンの決断

その後、ショータンはエドゥアール・ダラディエとポール・レノーの下で、1938年4月から1940年5月にかけて副首相として内閣に参加しました。レノーの辞任により急進党が閣外に下りた後も、フィリップ・ペタン内閣の下で再び副首相を務めました。

フランスは1939年9月にドイツに宣戦布告しましたが、1940年5月にはドイツ軍の猛攻により抵抗は打ち砕かれました。6月5日にダンケルクが陥落すると、フランス軍の敗北は決定的となりました。これを受け、ショータンはポール・ボードゥアンと同月8日に会食し、即時停戦とフィリップ・ペタンの首相任命を求めました。6月11日の閣議では、ショータンは絶望的な現状を打開するため、チャーチルをフランスに招き会談することを提案し、6月13日にトゥールで会談が実現しました。6月15日の閣議では、ドイツとの休戦問題が主要な議題となりました。ショータンは当時、膠着状態を打開するため、中立的な立場でナチス・ドイツの条件を確認するべきだと考えていました。もしナチスが高潔な人々であれば、フランスのことを考慮してくれるだろうし、そうでなければ継戦を選ぶだろう、という考えでした。

6月16日、ロンドンに亡命していたシャルル・ド・ゴールはポール・レノーに連絡を取り、フランスとイギリスの国家統合に関するイギリス政府の提案を伝えました。この提案に活気づけられたレノーは、閣議でイギリス政府の意向を伝えましたが、閣僚たちはペタンやショータン、ジャン・イバルヌガレらの反対を受け、イギリスの提案を拒否しました。特にショータンやイバルネガレーは、イギリスの提案を受け入れることが、将来的にフランスをイギリスの自治領に変える手段になりかねないと危惧しました。ジョルジュ・マンデルは彼らを臆病者だと非難しましたが、ショータンもマンデルを小心者だと非難しました。レノーは最終的に辞任しました。

戦後と名誉回復

ショータンは官命を受けアメリカ合衆国に渡ったことを機に、ペタンらヴィシー政権との関係を絶ち、余生をアメリカで過ごしました。第二次世界大戦後、フランスの裁判所は彼に対し、ナチス・ドイツへの協力を理由に、本人不在のまま禁錮5年の有罪判決を言い渡しましたが、1954年に恩赦されました。

カミーユ・ショータンは、激動の時代に翻弄されながらも、フランス政治に大きな影響を与えた人物です。彼の功績と、第二次世界大戦における決断は、今もなお議論の対象となっています。

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