フィリップ・ペタン

アンリ・フィリップ・ペタンについて

アンリ・フィリップ・ベノニ・オメル・ジョゼフ・ペタン（1856年4月24日 - 1951年7月23日）は、フランスの軍人及び政治家で、特に第一次世界大戦において重要な役割を果たしたことで名を馳せました。彼はフランス第三共和政の最後の首相およびヴィシー政権の主席として知られています。

初期の経歴

ペタンはパ＝ド＝カレー県コシ＝ア＝ラ＝トゥールで生まれ、1887年にサン・シール陸軍士官学校を卒業後、陸軍士官学校で歩兵学を教えました。しかし、彼の軍人としての出世は遅く、第一次世界大戦が始まった時点では58歳で大佐の地位にありました。

その後、ペタンは戦局の中で素早く昇進し、1916年にはヴェルダンの戦いでの功績により「ヴェルダンの英雄」と称賛されました。彼の指導のもと、フランス軍は多くの損失を被りながらも抵抗を続け、1917年には陸軍総司令官に就任し、1918年には元帥に昇進しました。

戦間期と政界への進出

戦後、ペタンは陸軍最高顧問となり、防衛計画を推進。しかし、彼の考え方には新しい技術への適応が欠けており、これは後のフランスの敗北を招く一因となりました。また、ペタンは晩年に結婚し、1934年には国防相を務めるなど政界でも足場を強化しました。

第二次世界大戦とヴィシー政権

1940年、ナチス・ドイツの侵攻が進む中、ペタンはレノー内閣の副首相に任命されました。彼はドイツとの講和を主張し、連日議論を重ねた結果、6月22日に独仏休戦協定が結ばれました。これを受けて、ヴィシーに移転したフランス政府においてペタンは主席として権力を握り、事実上の独裁者となりました。

ヴィシー政権下でペタンは「国家の父」として崇拝されましたが、その実態は彼自身が指導権を持たず、実際の政務は側近のピエール・ラヴァルが行っていました。ペタンの政策は中立を標榜しましたが、実際にはドイツに対し不可避な協力を行わざるを得ない状況でした。彼は降伏条件の交渉を進め、大戦中の占領地域で広範な協力を行いました。

ペタンの失脚と戦後

1944年に連合国がフランスを解放する中、ペタンは政権を引き渡す交渉を模索しましたが、自由フランスの指導者ド・ゴールに拒絶され、ジグマリンゲンに逃れた後、国家主席を辞任しました。

戦後、ペタンは逮捕され、公判にかけられました。彼は当初死刑判決を受けましたが、翌年には高齢を理由に無期禁固刑に減刑されました。その後、彼は流刑の地で生涯を閉じ、彼の評判はフランスにおいて極めて分かれることとなりました。

評価と影響

ペタンの評価は軍人としての功績と、第二次世界大戦中のナチス・ドイツとの協力という二つの側面から論じられることが多いです。第一世界大戦における彼の指導は評価されていますが、政治家としての行動は多くの賛否を招きました。ペタンの決定がパリを破壊から救ったとの意見もある一方で、彼の協力者としての立場はフランス国内での強い批判にさらされています。近年の言説にも見られる通り、ペタンの政治的影響は今なお議論の対象です。

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