カムィ焼

カムィ焼：謎に包まれた徳之島の古代陶器

鹿児島県奄美群島徳之島で、11世紀から14世紀にかけて栄えたカムィ焼。考古学的には「南島系陶質土器」とも呼ばれるこの陶器は、その独特の製法や文様、そして歴史的背景から、多くの謎を秘めています。

発見と命名

カムィ焼の存在が明らかになったのは、1983年。徳之島伊仙町阿三の亀焼地区における溜池造成工事中に、窯跡が偶然発見されました。地元の方言で甕や壺を「カムィ」、窯を「カムィヤキ」と呼ぶことから、この陶器の名が付けられました。2007年には「徳之島カムィヤキ陶器窯跡」として国の史跡に指定され、その歴史的価値が認められています。

カムィ焼の特徴

カムィ焼は硬く緻密な陶器で、表面は青灰色、陶土は赤褐色を呈しています。壺を主体とした器種には、甕、鉢、碗、水注などがあり、ヘラ描波状文が施されているのが特徴です。その形状や器種は本土の陶器と類似していますが、製作技法は朝鮮半島系無釉陶器に類似しており、両者の関連性が示唆されています。

「カムィ」という名称の発音は、奄美徳之島方言では[mɪ̈]という中舌母音に近く、「カメ」が変化した音と推測されています。

生産と流通

カムィ焼の生産は、11世紀後半から14世紀前半まで続いたと推定されています。中国産陶磁器や長崎県西彼杵半島産の滑石製石鍋が一緒に発掘されることが多く、これらの出土品の年代から推測されています。用途としては、カムィ焼は貯蔵容器、石鍋は調理器具、中国産磁器は食器として使用されていたと考えられています。

カムィ焼と滑石製石鍋は、奄美群島から沖縄、先島諸島まで広く分布しており、グスク時代の文化基盤を形成したと考えられています。カムィ焼の流通北限はトカラ列島南部とされています。

高麗陶工説

カムィ焼の成形方法や文様、釉彩などは、当時の日本陶器には類例がなく、朝鮮半島、特に高麗の無釉陶器に類似しています。このことから、高麗の陶工が徳之島で生産に関与したという説が有力視されています。

この説を支持する根拠として、徳之島で発見された地下式穴窯跡が、韓国の京畿道や忠清南道で発見されたものと類似していることが挙げられます。また、当時の太宰府と喜界島、そして南島（徳之島を含む）を結ぶ交易ルートと、日麗貿易ルートの接続が、高麗人陶工が徳之島へ渡来した背景として考えられています。

しかし、カムィ焼生産の終焉理由や、高麗人陶工のその後については、依然として謎のままです。琉球との交易の活発化による中国産磁器との競争、琉球勢力による征服など、様々な説が提唱されています。

今後の研究

近年では、喜界島の城久遺跡群との関連性が注目されており、今後の研究によって、カムィ焼の謎がさらに解き明かされることが期待されます。カムィ焼は、古代東アジアにおける文化交流や交易の複雑さを示す貴重な遺物であり、今後の研究によって、その歴史と背景がより深く解明されることが期待されています。

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