城久遺跡群

城久遺跡群：南西諸島の歴史を語る大規模集落跡

鹿児島県奄美群島喜界島に位置する城久遺跡群は、平安時代後期から室町時代にかけて栄えた大規模な集落遺跡です。喜界町城久集落周辺に点在する8つの遺跡からなり、2017年にはそのうち5ヶ所が国の史跡に指定されています。2003年から本格的な調査が始まり、徳之島のカムィ焼窯跡遺跡と並ぶ南島史における重要な発見として、大きな注目を集めています。

集落の規模と構成

城久遺跡群は喜界島の中央部、高台上に広がっています。数百棟にも及ぶ掘立柱建物跡や、多様な土坑墓、火葬墓が確認されており、その規模と種類の豊富さは南西諸島でも類を見ません。特に12～13世紀の屈葬墓は、日本本土の中世仏教思想に基づく埋葬方法と類似しており、大陸との文化的交流を示唆しています。

豊富な出土品

出土品からは、当時の喜界島の盛んな交易活動が見て取れます。大宰府出土品と同系の土師器をはじめ、越州窯系青磁、朝鮮系無釉陶器、初期高麗青磁など、中国や朝鮮半島からの輸入陶磁器が多数発見されています。近年では、12世紀の製鉄炉跡も複数発見され、鉄器生産も行われていたことが明らかになっています。これらの出土品は、喜界島が当時、東アジアにおける国際的な交易ネットワークに深く関与していたことを示しています。

喜界島の歴史的位置付け

『日本紀略』の記述によると、10世紀後半には大宰府が喜界島に南蛮人の捕縛を命じており、当時、喜界島にはそれなりの勢力があったと考えられています。奄美群島の中心部から離れた喜界島に拠点が置かれた理由として、ハブが生息していないという地理的条件も影響した可能性が指摘されています。

城久遺跡群の最盛期は、沖縄本島の三山時代、琉球王国成立期と重なります。1466年の第一尚氏による喜界島征服との関係は不明な点も多いですが、集落の終焉時期と関連する可能性も検討されています。夜光貝交易を通して博多商人との交易網に組み込まれ、朝鮮半島からの技術導入を経て徳之島でカムィ焼が生産されたとする説もあります。琉球弧における交易や移住を通じて基礎を築いた勢力の一つとして、城久遺跡群を拠点とした喜界島勢力が存在したという見解も提示されています。

平安時代末期から鎌倉時代にかけての喜界島は「貴海国」と呼ばれ、『吾妻鏡』には朝廷の支配が及んでおらず、領土の帰属が曖昧だったと記されています。このことから、当時の喜界島は一定の独立性を保っていたと考えられています。

最新の研究

近年では、城久遺跡の西側にある沿岸部の遺跡群、手久津久遺跡群も注目されています。14～15世紀の遺跡と推定されており、城久遺跡群と合わせて、喜界島の歴史をより深く理解するための重要な手がかりとなることが期待されています。今後の研究によって、喜界島の歴史、文化、国際交流の更なる解明が進むことが期待されます。

参考文献

澄田直敏、野﨑拓司、後藤法宣『城久遺跡群・山田半田遺跡-畑地帯総合整備事業（担い手支援型）城久地区に伴う埋蔵文化財発掘調査報告書-』喜界町教育委員会〈喜界町埋蔵文化財発掘調査報告書10〉、2009年3月19日
松原信之、野﨑拓司、澄田直敏、早田晴樹『城久遺跡群総括報告書』喜界町教育委員会〈喜界町埋蔵文化財発掘調査報告書14〉、2015年3月20日

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