カメラータ・ザルツブルク

カメラータ・ザルツブルクは、オーストリアのザルツブルクに本拠地を置く、国際的に評価の高い室内オーケストラです。その長い歴史の中で、音楽の都ザルツブルクを代表する存在として、数多くの名演を繰り広げてきました。

名称の変遷

カメラータ・ザルツブルクは、その活動初期には「モーツァルテウム・カメラータ・アカデミカ・ザルツブルク」や「カメラータ・アカデミカ・ザルツブルク」という名称で知られていました。

創立期：パウムガルトナーの時代

1952年、指揮者であり、モーツァルテウム音楽院の院長でもあったベルンハルト・パウムガルトナーによって創立されました。メンバーは、モーツァルテウム音楽院の教授陣と、その中でも特に優秀な学生たちで構成されていました。モーツァルトの楽曲に最適な室内オーケストラの編成、パウムガルトナーの卓越した指導力、メンバーたちの深い理解、そしてザルツブルクという地の利が相まって、カメラータ・ザルツブルクは目覚ましい発展を遂げました。1959年には、パウムガルトナーがザルツブルク音楽祭の総裁に就任し、オーケストラの活動は国内外へと急速に拡大しました。特に、モーツァルトの初期作品や全集の録音は、カメラータ・ザルツブルクの名声を確立する上で重要な役割を果たしました。

移行期

1971年にパウムガルトナーが亡くなった後、1973年まではスイス出身のウルス・シュナイダー、1974年から1977年まではイタリアを代表するチェリスト、アントニオ・ヤニグロが芸術監督を務めました。

黄金期：ヴェーグの時代

1978年、ハンガリー出身の名ヴァイオリニスト、シャーンドル・ヴェーグが芸術監督に就任しました。ヴェーグはモーツァルテウム音楽大学のヴァイオリン科教授も兼任しており、彼のクラスには世界中から才能ある学生が集まりました。この時代のカメラータ・ザルツブルクは、ヴェーグと彼に心酔する若い音楽家たちによる弦楽合奏を主体とし、必要に応じて管楽器が加わる編成でした。1990年代のヴェーグ指揮による演奏は、ヨーロッパの音楽界で「カメラータサウンド」として高く評価されました。ヴェーグは1997年に85歳で亡くなりました。

新時代：ノリントン以降

1997年、イギリスの著名な指揮者、ロジャー・ノリントンが首席指揮者に就任し、カメラータ・ザルツブルクは新たな道を歩み始めました。ノリントンは、それまでのモーツァルテウムにおける師弟関係に基づくアンサンブルから脱却し、36名の独立した室内オーケストラとしての活動を目指しました。彼は、ロンドン・クラシカル・プレイヤーズやエイジ・オブ・インライトゥメント管弦楽団（OAE）といったオリジナル楽器演奏の分野で名声を確立しており、1998年から2011年までシュトゥットガルト放送交響楽団の首席指揮者も務めました。

ギリシャ人ヴァイオリニストで指揮者のレオニダス・カヴァコスも、首席客演アーティストとして頻繁に共演しています。2002年には、チェリストのジャン・ワンが弾き振りでボッケリーニのチェロ協奏曲を録音し、後にドイツ・グラモフォンから「バロック協奏曲」としてリリースされました。

2007年から2009年まではレオニダス・カヴァコスが、2011年から2016年まではルイ・ラングレが首席指揮者を務めました。2016年以降は、特定の首席指揮者を置かず、コンサートマスターらが中心となって芸術的な方向性を決定しています。

カメラータ・ザルツブルクは、その創立から今日に至るまで、ザルツブルクの音楽文化を牽引し、世界中の音楽ファンを魅了し続けています。その演奏は、時代を超えて愛される普遍的な美しさを湛えています。

Camerata Salzburg - 公式ウェブサイト

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