カモノハシ (植物)

カモノハシ（Ischaemum aristatum L. var. glaucum (Honda) T. Koyama）

カモノハシは、イネ科カモノハシ属に分類される単子葉植物です。同名の動物も存在しますが、ここでは植物のカモノハシについて解説します。

特徴

カモノハシの最大の特徴は、葉の間から突き出る穂の形状です。一見すると枝のない棒状に見えますが、実際には2本の枝が偏平な面で互いに寄り合わさっています。この様子がカモの嘴に似ていることが、和名の由来となっています。

生育環境としては、日当たりの良い背の低い草原を好みます。根元の茎は地面を這うように伸び、小さな群落を形成します。茎はやや立ち上がり、多数の葉をつけます。葉は線形で硬い質感です。

花期は夏から秋にかけてで、細く直線状の花茎が葉の間から高く伸び、先端に1つの穂をつけます。穂の長さは4～8cm、太い円柱形で、全体としては細長い楕円形に見えます。穂は2本の枝が背中合わせになった構造で、それぞれの背面は平坦です。小穂は穂の枝に密着して生じ、楕円形で偏平です。乾燥すると小穂が反り返るため、穂全体がぎざぎざとした印象になります。

日本では、本州から九州の湿った草地や海岸付近に分布しています。

小穂の構造

カモノハシの穂は、軸の片側に小穂が密着して並ぶ構造をしていますが、2つずつの小穂がセットになっている点が特徴です。それぞれの小穂は、第一小穂と第二小穂と呼ばれ、形態や機能が異なります。

第一小穂は短い柄の先に付き、雄花を2つ含みます。第二小穂は第一小穂の柄の基部に付き、ほとんど柄がありません。第二小穂は、第一小花が雄性、第二小花が両性花となっています。どちらの小穂も楕円形で左右に偏平しており、それを構成する穎（えい）は二つ折りになっています。外側の穎はやや硬い革質、内側の穎は膜質です。

カモノハシの花には芒（のぎ）がありませんが、近縁種のケカモノハシでは第二小穂の第二小花の護穎に芒が見られます。

近縁種

カモノハシ属は、世界の熱帯から暖帯にかけて約50種が分布しており、特にアジア南部から太平洋の島嶼に多くの種類が見られます。日本には、カモノハシの他にいくつかの種が自生しています。

タイワンカモノハシ (I. aristatum L. var. aristatum)：カモノハシの基本変種。第二小穂の第四穎に芒が発達する点で区別されます。本州南部から琉球列島、中国南部、インドシナに分布します。
ケカモノハシ (I. anthephoroides (Steud.) Miq.)：全体にやや大きく、穂全体と茎の節に毛が生えるのが特徴です。カモノハシにはほとんど毛がありません。海岸の砂地に生える海浜植物で、日本では北海道から九州まで分布し、朝鮮半島や中国にも見られます。
ハナカモノハシ (I. aureum (H. et A.) Hack)：トカラ列島以南の琉球列島の海岸の岩場に群生します。すべての小穂に芒が発達します。

参考文献

佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎他『日本の野生植物 草本I 単子葉植物』平凡社、1982年。
北村四郎・村田源・小山鐵夫『原色日本植物図鑑 草本編 (III)・単子葉類（改定49刷）』保育社、1987年。
長田武正『日本イネ科植物図譜（増補版）』平凡社、1993年。
* 初島住彦『琉球植物誌（追加・訂正版）』沖縄生物教育研究会、1975年。

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