カラ・ホジョの戦い

カラ・ホジョの戦い

概要

カラ・ホジョの戦いは、1275年または1285年に、カイドゥ・ウルスのドゥア軍が天山ウイグル王国のコチカル・テギンの拠点であるカラ・ホジョを包囲した戦闘です。この戦闘は、ウイグルの重要な拠点に対する戦いであり、結果的に、ウイグル王国の領土が次第に侵食されていく過程の象徴的な出来事となりました。包囲は6か月間続き、最終的にコチカル・テギンは自らの娘を捧げることでドゥア軍を撤退させることに成功しました。

背景

11世紀以降、東部天山山脈一帯を支配していた天山ウイグル王国（西ウイグル国）は、モンゴル帝国成立後に早々とその支配下に入ります。当時のウイグル王国の君主、イディクート・バルチュク・アルト・テギンは、自発的にモンゴル帝国の臣下となり、チンギス・カンからも高く評価されました。このため、ウイグル王国は比較的高い自治の下、繁栄を享受しました。しかし、1260年の帝位継承戦争を契機に情勢は一変します。内戦の混乱の中、ウイグル王国は中央アジア各地の不安定な状況に巻き込まれていきました。

その後、オゴデイ家のカイドゥが中央アジアを平定し、「カイドゥ・ウルス」として知られる勢力を確立しました。クビライとの対立が深まる中、他の勢力との足並みを合わせるために、ドゥアとその弟ブスマはカラ・ホジョを包囲し、ウイグル王国をその配下に引き入れようと企図しました。

戦闘の経過

1275年、ドゥアとブスマの兄弟は12万の軍を率いてカラ・ホジョに進軍します。コチカル・テギンはドゥアの降伏要求を拒否し、彼は「忠臣は二主に仕えず」という言葉をもって抵抗の意を示しました。この応答により、戦闘は始まり、6か月にわたる包囲戦が展開されます。ドゥアはコチカル・テギンに投降を促し、彼の娘を妃として受け入れると提案しました。この提案に対してコチカル・テギンは悩みますが、最終的には娘を差し出すことを選択します。彼は娘の命と城の民を天秤にかけ、城を守る決意を固めていました。

長期の包囲戦の結果、城内は食料不足に陥り、民は疲弊していきます。ドゥアは最後の手段として娘の明け渡しを促しますが、娘は城の上から縄でドゥアの陣に降ろされることになります。コチカル・テギンは武士としての名誉を保つため、敵に屈することはありませんでしたが、結局ドゥアは娘を引き連れて撤退しました。

戦後の影響

「カラ・ホジョの戦い」は、ウイグル王国の運命に大きな影響を及ぼしました。この戦闘後、ウイグリスタンの情勢は変化し続け、ウイグル王国の領土はモンゴル勢力に異常なまでに侵食されていきました。コチカル・テギンの率いるイディクート政府は、ドゥアの退却後も持ちこたえようとしましたが、最終的にはカラ・ホジョを失う運命にあります。彼はその後、クビライに謁見し、最終的にハミルへと移動することになりますが、兵力の不足から失陥は避けられませんでした。

カラ・ホジョの戦いは、ウイグリスタンにおけるモンゴル勢力との争奪戦の始まりを見せつける出来事でした。これにより、地域における政治的な動乱が加速し、その後のカイドゥ・ウルスと大元ウルスによる争いは続いていくことになります。この戦いは単なる軍事的な衝突にとどまらず、ウイグル社会そのものに深い歴史的影響を及ぼすことになるのです。

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