カリノデンス

カリノデンス：白亜紀の海を彩った小型モササウルス

カリノデンス（学名: Carinodens）は、白亜紀後期に生息していたモササウルス科の絶滅した属です。「竜骨の歯」を意味する属名が示す通り、その歯は独特の形状をしています。当初はコンプレシデンス属（Compressidens）と命名されましたが、この名称が他の生物に既に使用されていたため、後にカリノデンス属へと改名されました。

グロビデンスとの近縁性

カリノデンスは、同じくモササウルス科のグロビデンス属と姉妹群であると考えられており、グロビデンス族に分類されています。両属の歯は丸くずんぐりとしており、原始的な二枚貝やカキなどの硬い殻を持つ獲物を破砕するのに適していました。

化石の発見

カリノデンスの化石は、主にオランダの堆積層から発見されています。頭蓋骨の要素が多く見つかっている一方で、頭部以降の骨格要素はヨルダンのマーストリヒチアン期の地層から産出したものが唯一の例です。

形態の特徴

カリノデンスは全長約3.5メートルと、モササウルス科の中では比較的小型の爬虫類です。その形態は、近縁のグロビデンスに類似するものの、歯の形状や歯骨の構造において明確な違いが見られます。

ホロタイプ標本は不完全な右の歯骨であり、後に発見された化石には分離した歯が含まれています。歯の縮み具合や繊細な歯骨は、グロビデンスと区別する上で重要な特徴です。歯骨には小さな突起があり、中央の歯骨歯は側方から見ると二股に分かれて長方形に近い形状で、頂点が尖っています。前方の歯は断面が円形で、頂点が強く湾曲して尖っています。

歯の異歯性

カリノデンスの歯は、モササウルス科としては珍しく、形状や大きさが異なる異歯性を示します。特に第8歯と第7歯の間で著しい小型化が見られ、歯の大きさや形状も大きく変化します。この特徴は、グロビデンスの一部の種にも見られますが、カリノデンスほど顕著ではありません。

食性

カリノデンスは、硬い獲物を捕食していたと考えられています。歯列の後方部分は細長く、歯冠が尖っているため、後方の5本の歯が主に食料の破砕に機能していたと考えられます。一方、歯骨の前方部分は、食料の捕獲と保持に使われていた可能性が高いです。

初期の研究では、カリノデンスの主な食料は棘皮動物であるとされていましたが、後の研究では、ベレムナイト、オウムガイ、二枚貝、腹足類、ツノガイ類、腕足動物、棘皮動物、節足動物など、幅広い獲物を摂食していたとされています。

深海生活の可能性

カリノデンスの化石が比較的少ないことから、深海で生活し、浅海域を泳ぐことは少なかったという仮説も提唱されています。これは、カリノデンスが浅海域の生物を捕食する機会が少なかったことを示唆しています。

分類

カリノデンスは、当初 Globidens fraasi として記載されましたが、歯の形状の違いからコンプレシデンス属に分離されました。その後、コンプレシデンス属が既存の属名であったため、カリノデンス属へと改名されました。

カリノデンスは、グロビデンスの姉妹群として、モササウルス亜科グロビデンス族に分類されています。しかし、プログナトドンがグロビデンス族に含まれるかについては議論が続いており、基盤的なモササウルス亜科として扱われることもあります。

カリノデンス属には、C. fraasi と C. belgicus の2種が知られています。C. fraasi の歯は枝分かれしていない一方、C. belgicus の歯には先端が3つあります。

ヨルダンで発見された化石は、ほぼ完全な頭骨、一連の頸椎、複数の脊椎、前ビレを含んでおり、カリノデンス属の新しい種であるとされています。この標本は、歯骨の異歯性に基づいて、これまで考えられていなかった生物がカリノデンスの獲物であった可能性を示唆しています。

カリノデンスは、そのユニークな歯の形状と小型な体躯から、モササウルス科の中でも特異な存在であり、白亜紀の海の生態系における重要な役割を担っていたと考えられます。

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