カリフォルニアの青い空

「カリフォルニアの青い空」（英語原題：It Never Rains In Southern California）は、イギリス出身のシンガーソングライター、アルバート・ハモンドが1972年に発表し、世界的に知られることとなった楽曲です。作詞・作曲は、ハモンド自身とマイク・ヘイズルウッドが手掛けています。1970年代初頭にアメリカ合衆国へ移住したハモンドの、異国の地での経験や心情が色濃く反映された作品と言えるでしょう。

商業的成功と評価

この楽曲は、同名のアルバム『It Never Rains in Southern California』に収録され、1972年末から翌73年にかけてヒットを記録しました。特に全米の主要音楽チャートであるビルボード誌では、1972年12月16日付の週間ランキングで最高位となる第5位に到達し、広く知られることとなりました。また、1972年のビルボード年間ランキングでも第54位にランクインしています。

一方、ハモンドの母国であるイギリスでは、対照的な結果となりました。ドゥービー・ブラザーズの「Listen to the Music」と並んでラジオで頻繁に放送され、エアプレイ回数は多かったにも関わらず、驚くべきことに主要なチャートに入ることがありませんでした。1970年代を通じて、このレコードは異なるレーベルから少なくとも5回にわたり再発売されましたが、さらに放送される機会が増えたにも関わらず、イギリスのトップ40チャートに名を連ねることはありませんでした。この事実は、音楽市場における国ごとの嗜好の違いを示す興味深い事例と言えるでしょう。

歌詞の世界観

この曲の歌詞は、成功を夢見て故郷を離れ、ロサンゼルスのハリウッドへと渡った一人の俳優の物語を描いています。ボーイング747型機に乗って期待に胸を膨らませてカリフォルニアに降り立った彼は、テレビや映画の世界で活躍しようと奮闘しますが、現実は厳しく、思うような仕事を得られず、成功を掴むことができません。悪戦苦闘の日々の中で、次第に夢は遠のき、自暴自棄になっていく主人公の心情が切々と歌われています。

特に印象的なのはコーラス部分です。

It never rains in California, but girl don't they warn ya.

It pours, man it pours.

「カリフォルニアではめったに雨は降らない、でも、雨が降る時は土砂降りになるって誰もが言うだろう？そうなんだ、土砂降りになるんだ。」というこのフレーズは、文字通りの天候の話であると同時に、人生における困難や挫折の象徴として解釈できます。普段は穏やかでも、問題が起きる時は一気に降りかかり、深刻な状況に陥るという、夢を追うことの厳しさや、絶望的な状況を巧みに表現しています。

アルバート・ハモンドのその後の活躍

「カリフォルニアの青い空」のヒット後も、アルバート・ハモンドは精力的に音楽活動を続けました。自身名義の楽曲では、「ダウン・バイ・ザ・リバー」や「フリー・エレクトリック・バンド」（いずれも1973年）などを発表しています。また、日本では「落葉のコンチェルト」（1984年）や「風のララバイ」（1981年）といった楽曲が独自にヒットするなど、特別な人気を博しました。

ハモンドはシンガーソングライターとしてだけでなく、作曲家としても非常に高い評価を得ています。他の多くのアーティストに楽曲を提供しており、その代表作としては、ホリーズの「安らぎの世界」（1974年）、カーペンターズの「青春の輝き」（1976年）、レオ・セイヤーの「ウェン・アイ・ニード・ユー」（1977年）など、いずれも世界的なヒット曲を世に送り出しています。1989年には、自身のベスト・アルバム『Best of Me』のために、「カリフォルニアの青い空」を再録音し、新たな形でこの名曲を届けました。

日本における受容と主なカバー

「カリフォルニアの青い空」は、日本でも広く知られ、多くのアーティストによってカバーされています。特に有名なのが、南沙織によるカバーです。

南沙織によるカバー

南沙織は、自身の通算8枚目のシングルとして「カリフォルニアの青い空」をカバーし、1973年 7月5日にCBS・ソニーから発売しました。日本語詞によるこのカバーは、原曲とはまた異なる魅力を持ち、多くのファンに親しまれました。シングルのB面には、「雨に消えた初恋」が収録されています。

南沙織版「カリフォルニアの青い空」は、以下のアルバムやコレクションに収録されています。

- オリジナルアルバム

- 『傷つく世代』

- ベストアルバム・コレクション

- 『南沙織ポップスを歌う』
- 『シンシア・ラブ』
- 『THE BEST / 南沙織 -1978年11月版-』
- 『南沙織ベスト Recall 〜28 SINGLES SAORI + 1〜』
- 『Cynthia Memories』
- 『ドーナツ盤型12cmCDコレクション』
- 『Cynthia Premium』
- 『GOLDEN☆BEST 南沙織コンプリート・シングルコレクション』
- 『ゴールデン☆アイドル南沙織』
- 『CYNTHIA ALIVE』

また、シングルB面の「雨に消えた初恋」は、『傷つく世代』、『Cynthia Memories』、『ドーナツ盤型12cmCDコレクション』、『Cynthia Premium』などに収録されています。

その他のカバー

南沙織以外にも、様々な日本のアーティストがこの曲をカバーしています。

- 荒川務：1974年のアルバム『太陽の日曜日』に収録。
- 広瀬香美：1997年のカバーアルバム『Thousands of Covers Disc1』に収録。
- 藤井風：2017年に自身のYouTubeチャンネルでカバー動画を公開し、話題となりました。

夢を追いかけることの光と影、そして人生の厳しさを描いた「カリフォルニアの青い空」は、発表から半世紀以上を経た現在も、多くの人々に聴き継がれている普遍的なメッセージを持つ楽曲です。

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