アルバート・ハモンド

アルバート・ハモンド（Albert Hammond）

アルバート・ハモンドは、1944年5月18日にイギリス、ロンドンで生まれた、影響力のあるシンガーソングライターです。彼の両親はジブラルタル出身でしたが、第二次世界大戦の影響でロンドンへ避難しており、戦後に一家はジブラルタルへ戻ったため、彼は幼少期をそこで過ごしました。

音楽キャリアの第一歩は、1960年にジブラルタルで結成したバンド「The Diamond Boys」でした。このグループは商業的な成功には恵まれませんでしたが、ジブラルタルに近いスペインの音楽シーンには一定の影響を与えたと言われています。その後、1969年にはイギリスのボーカルグループ「The Family Dogg」に加わり、彼らの楽曲「A Way of Life」はUKチャートでトップ10ヒットを記録しました。

1970年代に入ると、ハモンドはアメリカ合衆国へ活動の拠点を移します。そして、1972年にソロアーティストとして発表したシングル「It Never Rains in Southern California（カリフォルニアの青い空）」が全米ビルボードチャートで最高位5位、年間チャートで33位を記録し、世界的にその名を知られるようになりました。この曲は彼の代表作の一つとなり、多くの人々に愛され続けています。

日本においても、彼の楽曲は根強い人気を誇りました。「The Free Electric Band（フリー・エレクトリック・バンド）」や「For the Peace of All Mankind（落ち葉のコンチェルト）」などがヒットし、特に「落ち葉のコンチェルト」は日本独自のヒット曲として知られています。また、1981年には「Lullaby（風のララバイ）」が小ヒットを記録しました。

ハモンドの才能は自身の歌唱に留まらず、作詞・作曲家としても非常に高く評価されています。他のアーティストに提供した楽曲の中には、ロックからポップ、AORまで幅広いジャンルにわたり、世界的な大ヒットとなったものが数多く存在します。

彼が手掛けた代表的な提供曲としては、ホリーズが歌った「The Air That I Breathe（安らぎの世界）」、レオ・セイヤーの「When I Need You（ウェン・アイ・ニード・ユー）」、そしてカーペンターズの感動的なバラード「I Need to Be in Love（青春の輝き）」などが挙げられます。これらの楽曲は、それぞれのアーティストにとって重要なレパートリーとなり、長く聴き継がれています。

特に大きな成功を収めたのは、ダイアン・ウォーレンとの共作でスターシップが歌った「Nothing's Gonna Stop Us Now（愛はとまらない）」です。この曲は1987年に全米チャートで第1位を獲得し、大ヒット映画「マネキン」の主題歌としても知られています。また、ホイットニー・ヒューストンのために書かれた感動的な楽曲「One Moment In Time」や、ダイアナ・ロスが歌唱した「When You Tell Me That You Love Me（恋のプレリュード）」なども、彼の作曲家としての多才さを示す代表例です。

「愛はとまらない」は、その影響力の大きさから、第60回アカデミー賞、第46回ゴールデングローブ賞、グラミー賞といった権威ある賞の主題歌部門や楽曲部門にノミネートされるなど、高い評価を受けました。

長年にわたる音楽界への多大な貢献が認められ、アルバート・ハモンドは2000年に大英帝国勲章（OBE, Officer of the Order of the British Empire）を授与されるという栄誉に浴しました。

また、彼の才能は息子にも受け継がれています。息子のアルバート・ハモンドJr.は、世界的に人気のあるロックバンド、ザ・ストロークスのギタリストとして成功しており、親子二代で音楽史に名を刻んでいます。

自身の歌声でヒットを飛ばすシンガーとして、そして数多くの名曲を生み出した作曲家として、アルバート・ハモンドは半世紀以上にわたり第一線で活躍し続け、その普遍的なメロディーと歌詞は今もなお世界中の人々に感動を与え続けています。彼はまさに、ポピュラー音楽の歴史における重要な人物の一人と言えるでしょう。

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