カリーカップ

カリーカップ（英語: Currie Cup）は、南アフリカ共和国におけるラグビーユニオンの国内最高峰を決定する大会です。国内に存在する14の地域協会から選抜された代表チームが参加し、激しい優勝争いを繰り広げます。大会は実力に応じた2つのレベルに分かれており、トップレベルであるプレミア・ディビジョン（1部）には8チーム、それに続くファースト・ディビジョン（2部）には6チームが所属しています。

概要

1891年に創設されたカリーカップは、南半球で開催されるラグビーユニオン選手権の中でも、特に長い歴史を持つ大会の一つとして数えられます。同じく長い歴史を持つ大会としては、オーストラリアのシュートシールド（1874年創設）、アルゼンチンのリバープレートラグビー選手権（1899年創設）、ニュージーランドのランファーリー・シールド（1904年創設）などがあります。中でも地域代表チームによる対抗戦としては、世界で最も古い歴史を持つ大会として知られています。

優勝チームに贈られる金製のトロフィー、カリーカップは、大会の持つ比類なき伝統と権威を象徴しており、しばしば「聖杯（holy grail）」とも称されます。南アフリカ国内では、かつて南アフリカのチームも参加していた国際リーグであるスーパーラグビーよりも、このカリーカップでの優勝をより名誉あるものと考える熱心なファンも少なくありません。一方で、近年は南アフリカ代表クラスのトップ選手がナショナルチームの活動を優先する傾向が強まり、所属クラブにおけるカリーカップへの出場機会が減少している側面も見られます。

大会形式は、1999年までは全ての参加チームによる総当たり戦で行われていましたが、各チーム間の資金力や選手層の差から生じる競技レベルの格差拡大を反映し、現在はプレミア・ディビジョン（1部）とファースト・ディビジョン（2部）の2部に分けて運営されています。過去には、日本人選手である四宮洋平氏が2005年にボーランド・カヴァリアーズとプロ契約を結び在籍したことがありますが、カリーカップ公式戦への出場は実現しませんでした。

歴史

大会の起源は1889年に遡ります。この年に設立された南アフリカラグビー評議会（SARB）によって、地域協会の代表チームが集う初の全国大会「ボードトロフィー（Board Trophy）」がキンバリーで開催されました。ウェスタン・プロヴィンスがこの大会の初代王者となりましたが、これはカリーカップの公式記録には含まれません。

カリーカップの誕生は1891年です。イギリスの海運会社のオーナーであったドナルド・カリー氏が、ブリティッシュ・ライオンズの南アフリカ遠征に際して、当時の南アフリカラグビー評議会（SARB）に金製のカップを寄贈しました。このカップが以降、国内で最も優れたチームに授与されることとなり、現在の国内選手権「カリーカップ」創設へと繋がりました。

1892年には、ボードトロフィーに引き続き、キンバリーで第1回カリーカップが開催されました。ウェスタン・プロヴィンス、グリクアランド・ウェスト、トランスヴァール、ナタール、ボーダーの5チームが参加し、この大会を制したウェスタン・プロヴィンスがカリーカップの初代王者として歴史に名を刻みました。

アマチュアリーグ時代には、アングロ・ボーア戦争の影響で一部チームが参加を見送ったこと（1899年、これによりウェスタン・プロヴィンスの連覇が途絶え、グリクアランド・ウェストが初優勝）、地域協会の分離によるノーザン・トランスヴァール（後のブルー・ブルズ）の誕生（1938年）といった出来事がありました。1939年には、それまで総当たり戦の順位のみで王者を決定していた形式から、初めて優勝決定プレーオフが導入されました。創設以来、開催時期や形式が不定期でしたが、1968年以降は毎年開催される大会となりました。また、1992年から1994年にかけては、上位3チームにスーパーラグビーの前身大会であるスーパー10への出場権が与えられていました。

プロリーグ化と大会形式の変遷

1995年8月にラグビーユニオンのプロ化が施行されたことを受け、南アフリカ国内の地域協会は22から14に再編されました。これにより、1996シーズンからは全ての地域協会の代表チームがカリーカップに参加する形式が採用されました。同じく1996シーズンには、プロ化に伴い、オーストラリアやニュージーランドを巻き込む国際リーグ「スーパーラグビー（当初はスーパー12）」が開幕しました。南アフリカからは当初、カリーカップの上位4チームがスーパー12に出場する方式が取られましたが、1998シーズン以降はブルズ、ライオンズ、シャークス、ストーマーズ、チーターズといった、それぞれの地域協会とは別のフランチャイズチームがスーパーラグビーなどの国際大会に参戦する形に移行しました。

大会形式の大きな変更として、2000シーズンからはプレミア・ディビジョンとファースト・ディビジョンという2つのレベルに分かれて開催されるようになりました。ファーストディビジョンでは、近年、南アフリカ国外のチームが参加する試みも行われ、2019年にはアルゼンチンのハグアレスXVが優勝、2022年や2023年にはケニア、ジンバブエ、ジョージア、ナミビア、アメリカ合衆国のチームが招へいされましたが、2024シーズンからは再び南アフリカ国内チームのみの参加となっています。2020年にはCOVID-19パンデミックの影響でスーパーラグビーが中断され、国内代替大会「スーパーラグビー・アンロックト」が開催された影響で、カリーカップの開催時期が大きくずれ込みました。このシーズンのカリーカップ（2020-21）では、スーパーラグビー・アンロックトの成績も合算して順位が決定されるという特例措置が取られました。

また、2024シーズンからは、ユナイテッド・ラグビー・チャンピオンシップ（URC）など国際リーグとの日程重複を避けるため、プレミア・ディビジョンの開催期間が従来の5月〜6月から7月第1週〜9月下旬へと変更されました。これにより、年間を通じて南アフリカ国内ラグビーのスケジュールがより整理されることになります。

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