カルタス (免許状)

カルタスの制度とその影響

カルタス（葡: Cartaz）とは、ポルトガルによって導入された航海・交易に関する免許状であり、特に16世紀のインド洋で重要な役割を果たしました。この制度は1502年から始まり、航海を計画する船はポルトガル当局から許可を得てカルタスを掲示することが義務付けられていました。これにより、許可を得ていない船はポルトガル艦隊や他の監視者から攻撃される危険が伴いました。カルタスという言葉は、おそらくアラビア語の「قَرْطَس」（qarṭas）に由来し、紙や書類を意味することから、海上での公的な証明書としての役割が想定されています。

カルタス政策の背景

このカルタス制度は、ポルトガルがエンリケ航海王子の指導のもと、1443年に始めたライセンス制度を基にしています。当時、ポルトガルは西アフリカ沿岸の航路を独占し、大西洋を自国の閉鎖海とすることを目指していました。ポルトガルの航海許可を受けた船は、売上の一部、通常20%をポルトガル当局に納めることで、航海を行う許可と支援を受けることができました。このような仕組みにより、ポルトガルの商業活動と冒険航海への投資が進められました。

カルタスの発行とその意義

1502年にインド洋で開始されたカルタス制度は、ポルトガルの商業的利益を大いに促進するものでした。カルタスの発行はポルトガルにとって比較的低コストであったため、商船は地元の商取引環境においても強力な保護を受けられました。この制度の主要な目的は、商人から税金を収集し、ポルトガルの交易拠点へ船を誘導することでした。具体的には、ゴア、マラッカ、ホルムズなどのポルトガル商館へと船を集め、香辛料や他の貿易商品の独占を維持することが狙いでした。

許可状を持たない船がインド洋を航行することは認められておらず、ポルトガルは攻撃対象としました。船舶の種類に関係なく、ムスリムやヒンドゥー教徒、マレー人を問わず、ポルトガル艦隊の攻撃にさらわれる危険がありました。特に貿易に適したモンスーンのシーズンには、ポルトガルの艦隊が沿岸でカルタスの有無を確認するために哨戒していました。

カルタスの後の影響

カルタス制度は、ポルトガルの商業的影響力が低下するにつれ、その発行自体が国家にとって重要な収入源となりました。ライセンス制度の維持によってポルトガルは、継続的に収入を得ることが可能になりました。また、カルタスを取得することが商人間で商業活動を行う上での必須条件となることで、ポルトガルはインド洋の商業圏での地位を強化しました。このように、カルタス制度はポルトガルの影響力を拡大させただけでなく、他国との交易の構図をも大きく変えていったのです。

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