カルパト・ウクライナ

カルパト・ウクライナ共和国：幻の独立国家

カルパト・ウクライナ共和国（ウクライナ語: Карпатська Україна）は、1939年3月14日にチェコスロバキアから独立を宣言した、ごく短命な国家でした。しかし、その独立は長くは続かず、わずか3日後の3月16日にはハンガリー王国によって併合されてしまいました。

歴史的背景

カルパト・ウクライナは、現在のウクライナ西部に位置するカルパティア・ルテニア地方に相当します。この地域は、歴史的に様々な国の支配を受け、9世紀頃にはモラヴィア王国、10世紀以降にはブルガリア帝国、12世紀にはキエフ大公国、13世紀にはハンガリー王国の支配下に入りました。第一次世界大戦後、オーストリア＝ハンガリー帝国が崩壊すると、カルパティア・ルテニアはチェコスロバキアに編入されました。

チェコスロバキア統治下での自治運動

チェコスロバキアは、カルパティア・ルテニアに対して自治権を約束していましたが、その約束は十分に履行されませんでした。そのため、地域住民の間では不満が高まり、自治を求める運動が活発化しました。1938年、ナチス・ドイツがチェコスロバキアに圧力をかけるようになると、ハンガリーもカルパティア・ルテニアの領有を主張し、情勢はさらに不安定になりました。

独立、そして消滅

1939年3月15日、ドイツがチェコスロバキアの解体を決定すると、カルパティア・ルテニアは「カルパト・ウクライナ共和国」として独立を宣言しました。しかし、ハンガリーは直ちに侵攻を開始し、3月16日には全土を占領、併合を宣言しました。カルパト・ウクライナ共和国は、わずか3日間で地図から姿を消したのです。

第二次世界大戦とその後

第二次世界大戦中、カルパティア・ルテニアはハンガリー領として扱われました。1944年、ソ連軍がこの地域を占領すると、ソ連の支援のもとでザカルパート・ウクライナとして再び独立を宣言しましたが、1946年にはソビエト連邦に編入され、ウクライナ・ソビエト社会主義共和国のザカルパッチャ州となりました。ソ連崩壊後、ザカルパッチャ州はウクライナの領土として現在に至っています。

憲法と象徴

カルパト・ウクライナ共和国は、短期間ながらも憲法を制定し、国旗、国章、国歌を定めました。国旗は青と黄色のストライプ、国章は赤い熊が描かれたもので、国歌は「ウクライナは滅びず」でした。

結論

カルパト・ウクライナ共和国は、国際情勢の激動の中で生まれた、幻のような独立国家でした。その短い歴史は、周辺国の思惑に翻弄され、翻弄された人々の悲劇を物語っています。しかし、カルパト・ウクライナの人々の独立への願いは、その後のザカルパート・ウクライナとしての再独立、そして現在のウクライナの一部としての存続へと繋がっています。

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