カレン族の概要
カレン族(Karen)は、タイ北部や西部から
ミャンマー東部・南部にかけて居住する山地民であり、カレン系言語を母語としています。その文化は非常に多様で、広義にはカレンニー(赤カレン)を含むさまざまなカレン系民族が含まれます。狭義にはスゴー・カレンとポー・カレンを中心にした白カレングループが主なカレン族とされています。彼らは伝統的に半農半狩猟を生業として生活しています。
呼称と自称
「カレン」という言葉は、他者によって彼らを指すための呼称であり、
英語化されたものです。
ミャンマーではカイン、タイではカリアンと呼ばれます。カレン族の中で自らの呼称を認識している人は少なく、地域ごとに異なる名称が使われています。たとえば、ポー・カレンの自称はプロウン、スゴー・カレンの自称はパグニョです。これらの言葉は地域や言語グループによって異なるため、非常に多様な文化が見られます。
生活環境と社会構造
カレン族は主に山の中腹に居住し、川沿いで焼畑と水田耕作を行っています。各村には「水と大地の主」を祀る
守護霊の儀式を統括する世襲のリーダーが存在し、村の規約を決定する役割を担っています。彼らの親族関係は双形的であり、特に母系を重視した祖霊信仰が社会生活の中で重要な役割を果たしています。また、カレン族の文化にはキリスト教や仏教の影響も見られ、これらの信仰が民族形成に寄与しています。
歴史的背景
言語学的な観点から見ると、カレン系言語はシャン州南部に古くから存在したとされています。また、カレン族自体は中国西南部から南下してきたと伝えられ、この説は
ミャンマーのカレン・ナショナリストたちの間で公式見解とされています。カレン族が文献に登場するのは18世紀後半以降で、当時のビルマ族やモン族、シャム族との覇権争いの中で彼らの存在が重要視され始めました。19世紀に入ると、
ミャンマーの植民地化や宣教活動を通じてカレン族の存在が認識されるようになりました。
カレン系民族の構成
カレン族は、白カレン、赤カレン、黒カレンといった呼称で分類されることがありますが、これらは特定の民族を指すものではありません。タイの民間分類によれば、スゴー族、ポー族、モブワ族などが白カレンに含まれ、赤カレンにはカレンニー族が該当します。黒カレンはモン・クメール系言語を話すリアン族を指します。これらの民族は、言語や文化においてさまざまな特徴を持っています。
難民問題と独立闘争
ミャンマーでは1947年以降に
カレン民族同盟(KNU)が設立され、独立を求める闘争が続いています。1990年代には、難民がタイに流入し、労働力を提供することとなりました。その後も度重なる衝突や政権への反対運動の中で、多くのカレン族が難民として他国へ脱出しています。現在、タイと
ミャンマーの国境付近に多くの難民キャンプが存在し、国連難民高等弁務官(UNHCR)がその支援を行っています。
このように、カレン族は多くの歴史的背景や社会的特性を持ちながら、地元コミュニティでの生活を大切にしてきました。彼らの文化や習慣は、地域に根付いた特色を反映しており、特に困難な状況下でも彼らのアイデンティティを守り続けています。