カロル1世 (ルーマニア王)

カロル1世の生涯と治世

カロル1世（1839年4月20日 - 1914年10月10日）は、ルーマニアの初代国王であり、また1866年から1881年までのルーマニア公として国を統治しました。彼はホーエンツォレルン＝ジグマリンゲン家の出身であり、父は侯カール・アントン、母はバーデン大公女ヨゼフィーネです。彼の複雑な家系には、フランスの名門であるボナパルト家との縁もあり、ナポレオン3世との良好な関係がありました。特に彼は、ナポレオン3世の推薦を受けてルーマニア公の後継者として選ばれたことが、彼の政治キャリアのスタートを助けました。

ルーマニア公国の成立は、アレクサンドル・ヨアン・クザによるモルダヴィアとワラキアの合同によるものでありましたが、カロル1世が公に即位する前、既に国内には混乱が広がっていました。彼はオーストリアとの対立を避けるため、デュッセルドルフなどの都市を偽名で移動し、無事にブカレストに到着します。市民は彼を熱烈に迎え、新しい指導者への期待を抱きました。

1866年に到着したカロル1世は、フランス語でルーマニアの法を守り、国の権利と領土を守ることを誓います。彼の元でルーマニアは初めての憲法を採択し、近代国家としての基盤を整えました。この憲法はオスマン帝国からの独立を明記し、国の発展に寄与しました。1877年には独立宣言を行い、1881年には正式に国王として即位することとなります。

国王としての治世

カロル1世は王朝の威信を重んじ、国の発展に尽力しました。彼は非常に几帳面で、王室の儀式やその運営に対して厳格な姿勢を貫いていました。王妃エリサベタが「彼は眠るときも王冠を被っている」と揶揄したように、カロル1世の国家への献身は並々ならぬものでした。彼の治世の間、ルーマニアは経済的にも国際的にも確固たる地位を築き、カルパチア山脈のシナヤには彼が建てたペレシュ城が現在も観光名所として知られています。

また、彼は露土戦争後に国土を拡大する一方で、新たに獲得した地域との交通手段としてドナウ川に橋を架けるよう命じました。カロルの治世は国家の発展へ貢献したものの、第一次世界大戦が始まると、彼は中央同盟国側に立つことを選びました。これは国民との意見の対立を生むことになり、特にドイツ出身の王としての立場は難しいものでした。1883年に結んだ秘密条約により、ルーマニアも一時的にドイツ帝国に協力する道を選びます。

家族と後継者問題

カロル1世は公のとき独身でしたが、1869年にエリサベタと結婚しました。この結婚は冷静さを持つカロルと夢見がちな性格のエリサベタの間で摩擦が生じ、次第に彼らの関係は疎遠になりました。長女の夭折もこの状況を悪化させた一因です。1881年の王国成立に伴い、後継者問題は深刻な国家問題となり、カロルの親族は継承を辞退し、最終的にフェルディナントが後継者となりました。

エリサベタが関心を持った女官との結婚を巡り、カロルは彼女を国外に出す事態に至りますが、晩年にはお互いを理解し合う友人関係に戻ったと言われています。彼の治世は長く、国を近代化し、国民に愛される指導者としての名を刻みました。カロル1世は、1914年に急死を迎えましたが、その遺産はルーマニアの歴史に深く刻まれています。

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