カワサキ・750RS

カワサキ750RS/Z750FOUR：日本のモーターサイクル史に名を刻んだ名車

カワサキ750RSおよびZ750FOURは、1973年から1978年にかけて川崎重工業が製造・販売した、総排気量746ccのオートバイです。愛称は「Z2（ゼッツー）」として広く知られており、日本のモーターサイクル史において重要な位置を占める名車として、現在も多くのファンを魅了し続けています。

誕生の背景：Z1の成功と日本の自主規制

カワサキは1972年、排気量903ccのZ1を発売し、欧米市場で大きな成功を収めました。しかし、当時の日本では、業界の自主規制により750ccを超えるオートバイの販売が制限されていました。そのため、国内市場向けに750ccクラスのモデルが必要となったのです。当初はZ1のエンジンをボアダウンして750ccモデルを開発する計画もありましたが、最終的にはボアとストロークの両方を変更することで、746ccのエンジンを搭載した750RS（型式名Z2）が1973年4月に誕生しました。

750RSからZ750FOURへ：車名変更と進化

750RSは、発売以来高い人気を誇りましたが、1976年にはカワサキによる車名・型式番号の整理が行われ、750RSはZ750FOURへと車名を変更しました。型式番号もZ2からA4へと変更されています。この変更は、単なる名称変更だけでなく、性能向上やデザイン変更なども伴っていました。

Z750FOURは、750RSの系譜を受け継ぎつつ、出力向上、フレーム補強、ダブルディスクブレーキの採用など、様々な改良が施されました。また、外観デザインも変更され、より洗練された印象となっています。その後もマイナーチェンジを繰り返しながら、1978年まで生産が続けられました。最終モデルは、型式をKZ750D-1に変更し、後輪ディスクブレーキが採用されています。1980年には、Z750FX IIへとモデルチェンジが行われましたが、750RS/Z750FOURの基本的なエンジンとフレームは8年間も生産され続けたことは特筆に値します。

技術的特徴：Z1からの改良と独自の設計

750RS/Z750FOURのエンジンは、ベースとなったZ1（903cc）とは異なる設計となっています。Z1はボアとストロークが66mmのスクエアエンジンでしたが、750RSではボアとストロークの両方を変更することで750ccを実現しています。これは、単なるボアダウンでは給排気バルブの干渉問題や、高出力イメージとの不一致が生じるためです。この設計変更は、クランクシャフトの完全新設計を必要としたため、時間と費用のかかる作業となりました。また、750RS/Z750FOURには、セルフスターターに加え、キックスターターも装備されていました。当時、バッテリーや充電系の信頼性に対する懸念がまだあったためです。

モデルバリエーション：細かな改良が積み重ねられた歴史

750RS/Z750FOURは、生産期間中にいくつかのモデルバリエーションが登場しています。

750RS (Z2)：初期型はキャンディトーンブラウンの1色のみで、メーター表示は220km/hでした（書籍などに見られる240km/h表示は誤解）。
Z2A：カラーリング、ヘッドガスケット、メーターなどが変更されました。
Z2A後期型：カラーリング、シールチェーンの採用などの変更がありました。
Z750FOUR (A4)：車名変更、出力向上、ダブルディスクブレーキの採用、フレーム補強などが行われました。
Z750FOUR (A5)：カラーリング変更、セーフティスターター機構の追加などが行われました。
KZ750D-1：型式変更、後輪ディスクブレーキ採用、キャスター/トレールの変更などが行われました。

これらのモデルバリエーションは、市場のニーズや技術革新を反映したものであり、750RS/Z750FOURが長きにわたって愛され続けた理由の一つと言えるでしょう。

Z2ミラー：時代を超えて愛されるパーツ

Z1、Z2用にデザインされたバックミラーは、「Z2ミラー」として現在も高い人気を誇っています。車両本体の生産終了後も、用品市場で長く愛され続けていることは、このモデルの人気を象徴するエピソードと言えるでしょう。

まとめ：カワサキの歴史を語る名車

カワサキ750RS/Z750FOURは、日本の自主規制という制約の中で誕生しながらも、高い性能と魅力的なデザインで多くのライダーを魅了し、日本のオートバイ史に大きな足跡を残した名車です。その人気は、現在も衰えることなく、多くのファンから愛され続けています。ゼファーシリーズなどの後継車種にもそのデザインが受け継がれるなど、その影響は現代にも及んでいます。

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