カワサキ・Z650

カワサキZ650：70年代を代表するロードスポーツバイク

カワサキZ650は、1976年に川崎重工業（現カワサキモータース）から発売されたロードスポーツタイプのオートバイです。大型自動二輪車に分類され、北米ではKZ650として販売されました。「ザッパー」の愛称で親しまれ、その高い性能と信頼性から多くのライダーを魅了しました。

Z1/Z2を継承する血統

Z650は、カワサキを代表する名車Z1/Z2のすぐ下のクラスに位置づけられていました。また、それまでの750SSマッハ/500SSマッハシリーズの後継車種としても期待を集めていました。開発コードネームは「サーロインステーキ」と名付けられ、開発陣の意気込みが感じられます。（ちなみに、Z1は「ニューヨークステーキ」というコードネームが付けられていました）

Z650の最大の特徴は、カワサキ4気筒エンジンで初めて一体成型のプレーンメタルベアリングクランクシャフトを採用した点です。それまでのZ1/Z2はローラーベアリング組み立て式クランクシャフトを採用していましたが、Z650ではより信頼性の高い一体成型式を採用することで、耐久性とメンテナンス性の向上を図りました。

最高出力は64ps/8,500rpm、最大トルクは5.8kg-m/7,000rpmを発生し、5段変速リターンミッションと組み合わせることで、輸出仕様では最高速度190km/hを達成しました。国内仕様車には180km/hのスピードリミッターが装着されていました。

優れた運動性能と競技シーンでの活躍

フロントサスペンションのオフセット変更により、Z650は優れた運動性能を実現しました。その高い走行性能は、ジムカーナなどの競技シーンでも高く評価され、後継モデルであるZ750FX II/IIIが登場する1980年頃まで、競技では事実上のワンメイク状態となるほどでした。

その高い性能から「4サイクルマッハ」や、1クラス上の750ccと互角以上の性能を持つことから「750キラー」といった呼び名で親しまれ、多くのライダーから熱い支持を集めました。

エンジンの系譜と長く続く生命力

Z650に搭載されたKZ650BE型エンジンは、その後のZ500、Z400FX、Z550FXといった様々なモデルのベースエンジンとなりました。また、排気量を拡大したKZ750EE型エンジンは、Z750FXシリーズ、Z750LTD、Z750GP、GPz750といった後継機種にも広く搭載され続けました。さらに輸出用モデルではターボチャージャーを搭載したZX750EE型エンジンとして750ターボにも使用され、その高い信頼性を証明しました。

水冷エンジンの台頭により、Z650のエンジンは一旦その役目を終えるかに思われましたが、1991年にゼファー400の大成功を受け、ゼファー750に搭載されるZR750CE型エンジンとして復活を遂げます。ZR-7、ZR-7Sにも搭載され、1976年のZ650誕生からゼファー750の最終モデル生産終了となる2007年まで、四半世紀以上に渡って製造され続けるロングセラーエンジンとなりました。

多様なモデルバリエーション

Z650は、標準モデルのZ650Bを筆頭に、キャストホイールを採用したZ650C、トリプルディスクブレーキを搭載したZ650D/Z650LTD、北米向けの廉価版Z650F、アメリカンスタイルのZ650H/Z650CSRなど、多様なバリエーションを展開しました。それぞれのモデルが独自の個性と魅力を持っており、多くのライダーのニーズに応えるものでした。

Z650の系譜と現代への影響

2016年には、Z650の名を冠した新型モデルが発表されましたが、こちらは水冷の並列2気筒エンジンを搭載しており、本稿で述べた空冷4気筒エンジンのZ650とは異なる系統のモデルです。しかし、Z650という車名は、カワサキの伝統と歴史を象徴する重要なものとして受け継がれています。

Z650は、その高い性能と信頼性、そして多様なモデルバリエーションによって、カワサキの歴史に大きな足跡を残した一台と言えるでしょう。その魅力は、多くのライダーの記憶に今も鮮やかに刻まれているはずです。

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